来夏の映画観ようよ♪
vol.37 ドニー・ダーコ
2019-06-21
興行的に大成功したわけでも、内容的に万人受けする作品でもないが、世の中には一部から熱狂的に愛されている『カルト・ムービー』がいくつも存在する。好き嫌いがはっきり分かれるという点では、ボウモアのようなスモーキーでパンチの効いたウイスキーと似ているかも知れない。
睡眠中、無意識に自宅を抜け出してしまう夢遊病を抱える十代のドニー・ダーコ。精神疾患もありカウンセリングに通いながらも、両親と妹二人と平穏に暮らしていた。ある夜中、夢遊病の症状でふらふらしていると、フランクと名乗る銀色のウサギと出会い「世界の終末まであと28日と6時間42分12秒だ」と告げられる。世界の終末とは何か、フランクは一体何者なのか―朝、ゴルフ場で目覚めたドニーが帰宅すると、落下した飛行機エンジンが彼の寝室を直撃していた。その日以来、例のフランクが現れては彼に語りかけ、また、同時に周囲で不可解な事件が起こりはじめる。
ドニーにしか見えない銀色のウサギ、近所の気が触れた老婆、どの飛行機から落下したのか把握できないエンジン、空の裂け目…これらが暗示するものとは果たして…。人は、つい不思議なものに魅入られてしまう。理解できないものに激しく興味を抱き、惹きつけられるのに、それが結局わからないもどかしさが病みつきになってしまうのだ。その対象は前世や死後の世界といったスピリチュアルなものから宇宙人の存在と様々だろうが、そう、この映画にも限りない謎と不思議が詰め込まれていて、好奇心が止まらない!一度鑑賞しただけでは到底内容を理解できないし、何度観たところで解釈の仕方は幾通りもあるのだろう。
「ところで、どうしてこんなにたくさん映画を観るの?」。同じくこの映画が好みだという友人に訊ねられたが、考えたこともない質問だった。それでも咄嗟に出た答えは「映画は、人生を豊かにすると思うから」。こういうひとクセある面白い作品に出会えた際の歓びがたまらないのだ。そして、それを分かち合える人と語らうことも。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

