キム・ホンソンの三味一体
vol.115 うちの子も立派な霊長類
2019-05-23
先日のある新聞記事によると、ディズニー社のCEOの去年の年収は6,560万ドルだったそうです。この金額は同社の社員の平均年収の1,424倍にもなるのだそうです。因に1978年の社員の平均年収との差は30倍ほどだったそうです。今の格差社会を端的に表している良い例だと思います。
オランダの心理学者で動物行動学者のフランス・ド・ヴァールが、人間の遺伝子と99%一致するとされるチンパンジーを通して、「共感能力、感情移入」に関するとても興味深い実験をしています。ヴァールが、チンパンジーの群れに、その群れの全個体が食べるには少し足りない位の食べ物を投下して観察したところ、食べ物を全然手に入れられなかった数匹と、十分に食べた後でも余分の食べ物を手にもっていた数匹が出て来ました。すると食べ物を全然食べられなかった数匹が、余分な食べ物を持っている数匹の前で、相手に憐れみを乞うような動作や悲しそうな泣き声をしたそうです。そして結果はなんと、その数匹に共感した(富む)チンパンジーは、相手に自分の持っていた食べ物をポンと投げて与えたそうです。
ヴァールは、ボノボなど他の霊長類も多数実験したが、すべて同じ結果が得られたそうです。そして、その結果をもって彼が強調するのは、すべての霊長類は共感能力をもって生まれていて、この能力こそ霊長類の最大の特徴であるということです。
しかし、それでは同じ霊長類である人間はどうしてこうもどん欲で利己的なのか。彼は、その答えを「私達の経済構造において人間は利己的に生きるべきだと強要されているからだ」と言います。そして、それに加えて、生まれながらにして私達の中に存在する「罪」というものが、互いに分ち合い、愛し合うことを邪魔している、と言わざるを得ません。
昨夜、5歳の双子ボーイズの前で、指を怪我して痛がっている演技をしてみました。すると、二人とも目を丸くして「パパいたいいたい?」と言って、何度も「いたいのいたいのとんでいけ」をしてくれました。うちの子も立派な霊長類だなと思うと同時に、悲しいけれども、人を憐れむ能力は身につけるようなものではなく、徐々に失っていくもののようです。
【キムホンソン牧師の毎週の説教】
OC 復活ルーテル教会日本語部、9812 Hamilton Avenue, Huntington Beach, CA 92646
礼拝:日曜日、午前11時45分 (714)964-1912 california.lcrjm.com
LA 聖霊の実ルーテル教会、2706 W 182nd St Torrance, CA 90504
礼拝:日曜日、午後2時 (310) 339-9635 khs1126@gmail.com
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

