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コラム

ピアノの道
vol.7 聴覚のパワー

2019-04-03

“To listen is to expect to hear things (聴くと言うのは聞こえてくることを期待すること)。” 高校生の時のレッスン中の先生の言葉です。ことあるごとに噛みしめてきた私の音楽人生のテーマです。

 人間の五感の中で一番早いのは聴覚なんです。光の方が音よりも早いのは事実です。でも、いったん私たちの目や耳に届いた光や音を私たちの脳が処理して知覚に至る速度は、音の方が10倍くらい、高速なんだそうです。これは、聴覚が私たちの生存本能に一番直結する感覚だからです。

 触覚や味覚は、対象に直接触れることが必要です。視覚は向いている方向の物しか見えませんし、瞬きや睡眠時に目は閉じます。そして人間の嗅覚は、あまり鋭くありません。私たちは聴覚で命の危険を察知する可能性が一番高い。だから聴覚は常に機能している。そして、聴覚が五感の中で一番、感情や行動に直結しています。理性を超えて感性に訴えることで危険信号を察知したら逃げることが出来るんですね。

 危険信号は様々。悲鳴や、猛獣の鳴き声、何か大きなものが落下する音、サイレン。安心させてくれる音もあります。鳥のちゅんちゅんは平和な証拠。逆に鳥の声が急に止んだら危険信号です。また波の音を聞いて落ち着くのは、人間の睡眠時の呼吸の周期とほぼ同じ(一分間に12回くらい)だからだそうです。確かに波の音と同じように、赤ちゃんや家族の寝息って落ち着きますよね。

 でもこう言う自然音、生活音、危険信号は聞こえてくるもの。じゃあ、敢えて『聴く』と言うのはどういう行為なのでしょうか?普段、無意識に処理する音に敢えて集中する時、理性と感性が総動員されます。だから音楽がパワフルで感動的なんです。私は音楽を聴いていると、耳から入ってくる情報に想像力が総動員されて、視覚に意識が行かなくなり、宇宙空間を漂っているような気持ちになる事があります。

 健忘症で言葉を失われたシニアに、音楽を聞かせてあげるとイキイキとし、歌を歌って差し上げると一緒に歌える、と言う話しをよく聞きます。これも、聴覚が人間の本能に一番近い所で処理される感覚である事から、他の機能が退化しても聴覚の記憶が残る、と言う所に理由があるようです。高齢者の音楽活動の効果が、最近医療で注目されています。
音楽って本当に凄いんです!

この記事の英訳はこちらです
https://musicalmakiko.com/en/?p=977 


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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平田真希子 D.M.A. (Doctor of Musical Arts)

日本生まれ。香港育ち。ピアノで遊び始めたのは2歳半。日本語と広東語と英語のちゃんぽんでしゃべり始めた娘を「音楽は世界の共通語」と母が励まし、3歳でレッスン開始。13歳で渡米しジュリアード音楽院プレカレッジに入学。18歳で国際的な演奏活動を展開。世界の架け橋としての音楽人生が目標。2017年以降米日財団のリーダーシッププログラムのフェロー。脳神経科学者との共同研究で音楽の治癒効果をデータ化。音楽による気候運動を提唱。Stanford大学の国際・異文化教育(SPICE)講師。

詳しくはHPにて:Musicalmakiko.com




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