来夏の映画観ようよ♪
vol.26 グリンチ
2018-12-20
高級ホテルは一年前から予約で満室、当日は男性が高級スポーツカーで彼女を迎えに行き、高級レストランでフレンチを食べ、これまた高級ブランドのネックレスやバッグをプレゼントするのがトレンディ…これは、日本がバブルだった頃のクリスマスイヴの話。今となっては信じられない、もはや都市伝説のレベルである。
生まれた時から他の赤ん坊と違い、全身緑色の毛に覆われていたグリンチ。学校で、楽しみにしていたクリスマスの日に容姿をからかわれイジメを受けて以来、“フーヴィル”に住む人間もクリスマスも大嫌いになってしまう。街から離れた山の洞窟に引きこもり愛犬マックスと暮らす日々だったが、偶然出会ったシンディという少女により、すっかりひねくれていたグリンチの心に少しずつ変化が訪れ―。
「どうしてみんなこんなに浮かれているの?」。冒頭、クリスマスで賑わう街の人々を尻目に疑問を感じていたシンディに、手放しで賛成しながら見始めた。商業的イベントとしてのクリスマスへの批判が込められたシーンだと受け取ったが、全体として、グリンチの傷を負ったハートに強く共感を覚える映画である。とはいえ、彼と同じ目線で考えてしまう自分自身も相当ひねくれているのかも知れないと痛感した。最終的には老若男女誰もがハッピーになれる、クリスマスにぴったりの暖かな作品だと思う。中でも、「プレゼントや飾り付けがなくても、クリスマスは家族が居れば十分!」という台詞が大好きだ。無いものの中にひとつ、“恋人”という単語もあって良かったかも知れないが。
日本では、子どもの頃は“サンタクロースがプレゼントをくれる日”、大人になれば“恋人と過ごし、プレゼントを渡す日”という認識も多く、クリスマスに一人ぼっちなんてかわいそうという意味で“クリぼっち”という造語すらある。バブル時の異様な盛り上がりも面白そうではあるが、祝祭日の過ごし方は人それぞれ。毎年家族とゆっくり過ごせている自分は幸せだな、と思う。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

