来夏の映画観ようよ♪
vol.25 ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生
2018-12-06
実は、“ハリー・ポッター”シリーズは原作も映画も最後まで見届けたが、特段好きというわけではなかった。作中に溢れる独特な専門用語や登場人物に馴染めず、世界観に没入出来なかったからだ。
魔法動物学者ニュートは、密輸された魔法動物を保護し、元の生息地に帰そうとアメリカへ渡航する。魔法を使えない普通の人間ジェイコブや魔法省に勤めるティナ、妹クイニーと知り合い、また、意図せず凶悪な魔法使い『グリンデルバルド』との戦いに巻き込まれるものの逮捕に貢献し、無事帰国する。しかしグリンデルバルドは逃亡、ニュートはホグワーツ魔法学校時代の恩師ダンブルドアから協力を頼まれ、手がかりを求め今度はパリへ向かうことに―。
“ハリー・ポッター”本編よりもスピンオフであるこちらが好み。なぜなら、小さなカモノハシのような愛嬌あるニフラーをはじめ、カマキリと植物が合体したようなボウトラックルといった現実に居そうな造形の魔法動物たちの存在や、前作では1920年代のニューヨーク、今回はパリの街が舞台で当時の建物や人々の服装がノスタルジックに再現されており、さらにタイタニック号の事件を想起させるエピソードや第二次世界大戦など史実に絡めてある点が、現実から離れすぎておらず親近感が持てるのだ。
極めつけは、ひと癖ある登場人物たち。内気で学者肌のニュートはもちろん、暗い過去を持つ元恋人のリタ、そして、類稀なカリスマ性で善良な魔法使いをも惑わせるグリンデルバルド!人の心の隙に付け入り、有能な部下を集めて自らは手を汚さずに悪事を働く。魔法使いがなぜ人間から隠れて生きねばならないのか、と演説するシーンはナチス党大会の際のヒトラーを彷彿させ、かつて人々はこうして言葉巧みに扇動されたのだな、と戒めの意味が込められているのではと考えてしまった。
『みぞの鏡』や『まね妖怪』、ダンブルドアにレストレンジ家など“ハリー・ポッター”と関連する用語や人物が出てくるものの、独立した作品として十分楽しめるはず。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。