旅は呼んでいる。
vol.14 香港
2018-09-27
「“シグナル8”が発令されたらお店は全てクローズするから、水と食料は確保してね」。台風22号の直前、香港在住の知人がアドバイスをくれた。会社も学校も交通機関も休みになり、人命が最優先ー。
香港を訪れた理由の一つは、ずばり夜景を見るため。日本では昔から“百万ドルの夜景”と名高いが実際にはどうか?まずはリッツカールトンの118階にあるバー、OZONEへ。内装は近未来的雰囲気で、テクノかハウスが流れてきそうなクラブのよう。地上約500mからの景色は天候にもよるだろうが、少々ガスで曇り霞んでいた。観光の定番ヴィクトリア・ピークの長所は、最も栄えている九龍と香港島エリア両方の全景が見られることだろう。ただし、やはり高度があるせいかモヤモヤとした夜景だった。個人的には、九龍側から香港島側を見るのが一番のオススメ。地上なのでガスの影響が少なく、水面に反射して映る高層ビル群の光がくっきり見えて美しい。スイートルームが高層階でなく中間あたりに位置するホテルもあると聞き、納得した。
また、今回は中華料理の食べ歩きを楽しみにしていた。XO醤の発祥店であるペニンシュラのスプリングムーン、福臨門、鼎泰豊など数軒回り、これだ!と感動したのはミシュランで星二つを獲得している新同樂。海老のあんかけ焼そばやフカヒレ餃子が絶品、他の物もハズレなく唯一再訪した。
なお、ペニンシュラは言わずと知れた五つ星ホテルで優雅なエントランスやアフターヌーンティが有名だが、激動の歴史の証人でもある。イギリスの植民地時代、建設中の敷地には砲座が置かれ、開業したものの太平洋戦争中には日本軍により『東亜ホテル』と名を変えさせられている。
先日の北海道での地震からほんの数時間後、余震の心配もある中、信号も機能していないのに大勢の人間が出社していたことに驚いた。“karoshi”が英語で通じてしまうのも無理はない。災害時くらい、香港を見習って自分を優先させてはどうだろうか。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。