あんな家こんな人
vol.10 風水的孤高の人
2018-07-19
新田次郎の『孤高の人』は、凛として、己の道を追求した人だ。最近、私がお会いするチャンスがあったのは、風水的『孤高の人』。ハリウッドの重鎮、彼らの暮らす豪邸はビバリーヒルズの山頂にある。お宅にたどり着くまで、延々とクネクネ道を登って行く。すれ違いはどうやってするのかと思う程の道の狭さだ。本当に3Dマップで観たように、登りきった山頂に張り付くように邸宅はあった。テラスの”尖端”は、空中綱渡りの綱の上に立っている気分がした。360度視界が広がる。「風が強くて、窓のひさしがよく飛んでしまうんだ。」と。目を細めると北はベニス、南はロングビーチと遠く霞んで海が見える。ロサンゼルスTOPクラスのゴージャスなViewだった。よくあることだが、「最高の不動産物件=風水最良の物件」とはならないのが、非常に残念だ。ご多分に洩れず、こちらの物件も同様だった。
風水で理想の土地と云えば、「後ろにサポートしてくれる山や高台があり、前には湖や海などきれいな水が湛えられている平地。」とされている。後ろの山は人間関係を表し、前の水は財を表す。
近代はなかなかそう云った理想の土地を見つけることは難しくなってはいるが、中国の出世した人の代々の墓は、今でもそのようなものが多い。例えば、習 近平の父親の墓は将に風水に則って作られている(らしい)。後ろにこんもりとした小高い丘を背負い、前には芝生の平地。あやかろうと人々が訪れる観光地になっているという。話は逸れるが、風水は元々は、お墓から始まった(陰宅風水)。如何にいい場所にお墓を作るか、いいお墓を作れば、子孫まで繁栄すると云われた。文化大革命の際、政府軍が毛沢東の代々の墓を破壊しようと探したが、村人が嘘のお墓を教え、間違った墓を壊していったという逸話がある。
話をそのセレブに戻そう。
彼の家は山のてっぺんにある。これは、風水では、『露風殺ろふうさつ』『騎龍』といい、サポートしてくれる人間関係が段々希薄になり、一人で右往左往しなければならなくなる。また強すぎる風が家の気を全て吹き飛ばしてしまう。家の外で補うのは難しいので、家の一番奥に「山としてのアメジストドーム」を置いてもらった。気を中に抱え込んできっといい効果を運んでくるだろう。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

