来夏の映画観ようよ♪
vol.12 パルプ・フィクション
2018-05-18
日本ではゴールデンウィークが終了し、期間中の出国者は86万人を超えた。今でこそ気軽に旅行が出来るが、戦後間もなくはテレビの普及率も低く、映画館で余暇を過ごす人も多かった。この時期に興行収入が良かったことから、映画業界が「黄金の週だ」、という意味でゴールデンウィークと名付けたそうだ。そんな連休中、インドア派の知人におすすめの映画を聞かれて答えたのが本作である。
舞台はロサンゼルス。朝のダイナーでチンピラ風カップルが今まさに強盗を働こうとしているところから物語は動き出す。そこから、ギャングのボスであるマーセルスと、彼に仕える部下で人殺しの際に必ず聖書の一節を暗唱するジュールス、用を足しに行く度に重大な事件が起こる不運なヴィンセント。ボスの女房でコカイン中毒のミア、八百長を持ちかけられた落ち目のボクサーブッチなど、アクの強い登場人物たちが巻き起こす騒動を追いかけていくのだが、彼らの運命は奇妙に交差してゆき―。
タランティーノ監督のブラック・ユーモアとシュールなセンスには舌を巻く。お気に入りは、ジョン・トラボルタ演じるヴィンセントだ。ボスの女房役ユマ・サーマンと“サタデー・ナイト・フィーバー”を髣髴とさせるツイストダンスを披露するシーンは見所で、キリリとした表情と本気の踊りはさすがだが、彼の不運さには気の毒を通り越して愛おしさすら湧く。他の登場人物たちもダメな大人ではあるが「え、そんなところで?」と意外な場面で人情を発揮するのが魅力で、笑いのツボでもある。題名の“パルプ・フィクション”には、安いパルプ紙で発行された下らない話だよ、というメッセージが込められており、それを前提に見るとなるほどと思えるだろう。
名前は知っているのに、なかなか見る機会のない映画は結構あるはず。ロサンゼルスでは五月から野外映画のイベントが行われ、“E.T.”や“レイダース/失われたアーク”、“スピード”などが上映されるそう。たまには旧作もぜひ。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

