来夏の映画観ようよ♪
vol.8 シェイプ・オブ・ウォーター
2018-03-15
いったい何だろう、この既視感は。どこかで見かけたような気がするのだが…ジェネレーション・ギャップは承知で、本作を観てはたしてどれだけの人間が同じような感覚を覚えるだろうか?
アメリカとソ連が対立していた冷戦時代。政府の研究施設で清掃員として働くイライザは、生真面目で映画が好きな女性。首の怪我により、耳は聞こえるが言葉を発することが出来ないという障害を持ちながらも、手話で隣人や同僚とコミュニケーションを取り、慎ましく暮らしていた。ある日、施設に南米アマゾンから魚類と人類の中間のような不思議な生き物が運ばれてくる。水陸で生きられることから軍事目的で利用しようと研究が始まるが、その生き物、半魚人に対する扱いは残酷なものだった。イライザは水槽に閉じ込められた半魚人に興味を抱き、手話で意思疎通をしながら親密になっていく。
緑色を多用した、限りなく現実に近いけれどどこか違うメルヘンチックな日常風景。他の作品とは一線を画す、唯一無二の世界観が広がっている。そしてぱっと見ると不気味だが愛嬌のある半魚人に、そこはかとなく懐かしい面影がー特撮ものに出てくる、怪獣だ!“特撮もの”とは、特殊撮影技術を用いたウルトラマンや仮面ライダー、ゴジラなどの映像作品をさす。実はギレルモ・デル・トロ監督、日本の特撮もの、特に怪獣が大好きで影響を受けたと公言しており、冒頭の既視感に納得がいく。怪獣といえば、おおかた敵として認識され、最後には倒されるべき存在。そんな哀しい宿命を背負う彼らに魅力を感じ、愛着を抱く監督だからこそ、人間に虐げられた半魚人とヒロインとの恋愛模様をロマンチックに描けたのだろう。
ファンタジー色の強い作品は選ばれにくい、という慣習を打ち破りアカデミー賞作品賞&監督賞を受賞。余談だが、8月にアナハイムで“パワーモーフィコン”という日本の特撮をテーマにしたイベントが開催されるという。アニメ然り、特撮も広く認知されているようで嬉しい限りだ。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

