JERCの教育相談Q&A
vol14 バイリンガルが必要なくなる日が来る?!
2018-03-14
人口知能AI (Artificial Intelligence)の開発により、バイリンガル(二言語話者)は近い将来必要なくなるだろうと言われています。翻訳や通訳の仕事も人間にとって代わり、AIが活躍する時代が刻々と迫って来ているようです。
そこで私の頭に浮かんだのは、JERC日米教育サポートセンターが教育サポートを行っている、海外で教育を受けている日本人の子どもたちの将来です。 彼らの多くは現地校で英語で学び、日本人として日本語でも学習を続けています。苦労して学んだ二言語、いわゆるバイリンガルとして将来の仕事に繋げたいと考えている子ども達が、 将来、必要でなくなるとしたら・・・。 現在は通訳や翻訳の仕事に携わる人、企業の中で得意な英語を生かして仕事に就いている人、様々ですが、将来、これらの仕事の多くを人工知能が行うことになると、これまでの考え方を変え発想の転換を図らなければなりません。
では子どもたちは今後、何を学びどのような職業を選んだらよいのか。人間社会の変化の中で、バイリンガルは必要なくなるという問題を見据え、新めてなぜ現地校で学ぶのか!地域の問題や家庭の教育方針も含め考えてみたいと思います。
なぜ現地校で学ぶのか:
① 通える距離に全日制日本人学校がないので、現地の学校で学ぶしかない。
② 第二言語の英語で学び、英語習得はもちろんのことその国の歴史、文化、習慣などを知り現地で生活したい。
③ 英語で学びながら、日本語力も育てる。その上で企業に就職しバイリンガルとして仕事をしい。また高度なバイリンガルとして専門分野を職業としたい。例えばAIシステム、デジタルヒューマンを企画、構築するサイエンティスト。
以上のような理由から、米国で生活している日本人家庭の多くは、現地校を選んでいるのではないでしょうか。もし、英語が習得できるからというだけで現地校を選ぶならば、もうその方針は現実的ではなく、異なった視点で子どもの教育を考えなくてはなりません。
“英語は、習得したい人だけが学べばよい”と公言されている研究者もいます。私も同意見です。英語と日本語は、構文はもちろんのこと文化や習慣も全く異なっており、日本人が英語を習得するのはたいへん困難であると言われています。これからは日本語以外の言語はAIに任せ、高度な日本語力で理解し思考できる、そして発言できるような教育を幼児期より施した方が、研究や技術開発部門などには良い結果が得られるものと思います。
日本では英語ブームに便乗し、英語で保育を行うプリスクールなどが人気を得ているようですが、たいへん驚きます。3歳、4歳の母語が急激に伸びる年齢で、第二言語である“英語”を導入することに、たいへん危機感を覚えるからです。言語は知能の発達に関係しており、日本語力が低ければ将来に多大な影響を与えることは周知の事実です。幼少期より、母語である日本語で理解力を高め、深い思考力を育てることは非常に重要で、まず母語を確立しておくという基本を忘れないでいただきたいですね。
未来予測によると、今から約10年から15年後には、現在ある仕事の65%が無くなり、AIシステム導入で世の中は動いていくようです。であるならば、高度な日本語力を習得し、理解力や思考力を育てておくことに主眼を置いた方が、これからの時代、大いに役に立つのかも知れません。 激変する時代、「バイリンガルが必要なくなる日」は確実にやって来ます。最先端の波に乗り遅れないよう、子どもたちを見守り導こうではありませんか。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。