来夏の映画観ようよ♪
vol.7 Darkest hour
2018-03-01
明後日は、アカデミー賞授賞式。前哨戦とされるゴールデングローブ賞はすでに終了したが、必ずしも一致するわけではないので予想を立てるのも面白い。個人的に推したいのは、第二次世界大戦下のイギリス首相、ウィンストン・チャーチルを描いた本作だ。
1940年、5月。ヒトラー率いるナチス・ドイツは、チェコスロバキアとポーランドに続き、ノルウェー、デンマークにまで侵攻していた。次はイギリスの番かもしれない―迫り来る脅威に直面し、それまでドイツに宥和政策をとってきたチェンバレン首相は議会で信を問われる。そこで新たな首相として抜擢されたのが、海軍大臣を務めていたチャーチル。彼は好戦的な性格で知られており、ヨーロッパを席巻するヒトラーに対抗するために最適な人物とされたのだ。しかし、トルコにおける「ガリポリの戦い」での失敗や、植民地であったインドへの見解から、政権内には彼に反発する者も多かった。そんな中、日々勢力を強めるドイツにチャーチルはどう立ち向かっていくのか。
司令室での緊張感や当時のロンドンの様子、何よりチャーチル首相の人柄が魅力的で引き込まれる。朝からスコッチ、昼にはシャンパンを嗜む豪快さもさることながら、頑固一徹、他人にどう思われようと自分を貫く姿勢は偏屈を通り越して格好がいい。そんな彼の“We shall never surrender(我々は決して降伏しない)!”と演説するシーンには強く心を打たれた。ゲイリー・オールドマンの演技は、実際のスピーチ映像同様に聴衆を奮い立たせる、カリスマ的、圧倒的なパワーを感じさせるものだった。
戦後、彼は首相を辞任しているが実はそこからまたひと波乱がある。激動の時代を生きた、激動の男―映画からそれが十二分に伝わってきた。奇しくも、劇中で重要な鍵となる「ダンケルクの戦い」を題材にした“ダンケルク”が同じ作品賞候補に挙がっている。当時の戦況がいかに困難だったか、合わせて観ることでより理解が深まるだろう。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

