来夏の映画観ようよ♪
vol.5 インシディアス ザ・ラストキー
2018-02-01
ワインを選ぶ際、エチケット(ラベル)のデザインに惹かれ手に取ってしまうことがある。なんだか美味しそう・・・映画のポスターにおいても同じような感覚を抱く。暗闇に浮かぶ瘦せこけた手―指先すべてに鍵がついており、反射的に言い知れぬ不安に駆られた。いったいどんな恐怖が待ち受けているのだろう?本作はそんな期待を抱かせる“キービジュアル”だった。
1950年代。少女エリーズは、弟と両親の四人でニューメキシコ州に暮らしていた。父は常に不機嫌そうだが、その一因が娘にあることは察しがつく。なぜなら彼女は、他の家族に見えない者が家中にいると訴えるのだから。父は「そんなものはいない!」と折檻をするが、母は「あなたには特別な能力がある」と信じてくれた。しかし、地下室で“邪悪な存在”と遭遇して起こった悲劇によってますます父との確執は深まり、ついに弟を残して家を出てしまう。数十年後。エリーズは自身の霊能力を活かし、二人の助手と悪霊退治に励んでいた。そこに、一本の依頼がくる。引越しをしてから異常なことが続いているから調べて欲しい、と。住所を聞くと、幼い頃に住んでいたあの家だった・・・。
本作が他のホラーと一線を画しているのは、チェーンソーで襲われ血しぶきがあがるといった凄惨な描写ではなく、不安を煽る効果音と霊の造形で怖さを演出している点や、主人公エリーズと助手二人の愛嬌ある人柄だ。また「ランタン」を道標に「赤い扉」の向こう側=死者の国を訪れるという構図も、ファンタジー要素は濃いがうまくバランスが取れている。その証拠に、劇場では男女問わずあちこちから短い悲鳴が聞こえ、自分も肘掛けにしがみつく有様だった。
「吊り橋効果」なるものがある。揺れる吊り橋を渡ることで心拍数が上がり、そのドキドキを恋と錯覚してそばに居る異性に好意を抱く、という心理学的効果だ。バレンタインも間近。吊り橋の代わりに、気になる相手と本作でグッと距離を縮めてみるのはいかがだろう。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

