来夏の映画観ようよ♪
vol.2 ブレードランナー
2017-12-06
「“二次嫁”が、画面から出てきた!」
主人公LAPDの刑事Kと、ヒロインのジョイとの恋模様はいまどきである。どこが、というとジョイはAI(人工知能)が搭載されているものの3Dホログラムの女性に過ぎない点だ。
ここ数年、日本に限らずアニメやゲーム上の人物に恋をする人間は少なくない。あくまでもテレビやパソコンの向こう側にいる二次元の理想の嫁―実体を持たないヴァーチャルな異性との恋愛が30年後には平面から立体となって実現しているというわけだ。
さらに、実はKは人間に対して“絶対服従”であることをインプットされ人工的に造られた<レプリカント>である。彼の任務は、人間らしい感情が芽生えてしまったがために「自由に生きたい」と反乱を起こした旧型レプリカント達の始末。はじめのうちは躊躇なく同士を抹消していくのだが、あるきっかけから自分は人間かもしれない、という疑念を抱くようになり・・・
非常に倫理を問われるテーマであり、現実に差し迫った問題を扱った興味深い作品である。冒頭で述べた“二次嫁”を筆頭に、最近「AIに職を奪われる」という不安の声や、「AI同士が独自の言語で会話を始めた」という類のニュースを耳にするからだ。
では、そのAIがさらに肉体を手にした時に一体なにが起こるのか。1982年公開のブレードランナーの続編、という視点で見ると、歌舞伎町と香港をごちゃまぜにしたようなネオン街の活気はなく、80年代のファッションやムーディな音楽などが踏襲されていないようで寂しい気もする。
だが、我々の生きる時代も劇中の時代も進んでいるのだから当然の流れと言えよう。
見所は、核爆発のあとに荒廃してしまった近未来の映像美そのものも含め、人間でありたいと願うKの葛藤とジョイへの確かな愛情、そしてラストに向けて彼が選んだ答えではないだろうか。
本作の前日譚として短編三部作が無料視聴可能で、中でも“ブラックアウト2022”はさすが世界に誇るジャパニメーション!という贔屓を差し引いても、テンポの良さや可愛らしい旧型レプリカントの個性が際立って魅力的なのでぜひ。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

