後藤英彦のぶっちゃけ放題!
第412回 移民の国のアメリカファースト
2017-02-09
七面鳥にとって災難の日が年に三回来る。
感謝祭に四千万羽、クリスマスに二千万羽、復活祭に千九百万羽が締められ米人の胃袋に入る。
最後の感謝祭に臨んだオバマ前大統領はロースト寸前だった白亜館の七面鳥二羽を放免、バージニアの牧場で余生を過ごせるよう配慮した。
最後の大統領令で七面鳥二羽の命を救ったのだった。
一方のトランプ新大統領は三九の選挙公約を果たすため矢継ぎ早に大統領令を乱発している、狂った牛のように。
大統領令は独裁的な命令で、議会チェックを経ずに法的強制力をもつ。
イスラム系イラン、イラク、シリア、リビア等七カ国の人々および難民の米国入国の一時禁止(イスラム九○日、難民一二○日)、メキシコ人の越境を遮る国境沿い壁の建設、オバマケア廃止等が含まれている。
これに対し連邦地裁が直ちに差別的な入国禁止措置を「無効」とする仮処分を出した。
トランプが即、これに反意を発し連邦控訴裁に控訴した。
裁判所の判定はトランプの今後を占う極めて重要な意味を持っている。
控訴裁と最高裁で次々、「無効」の判定を下せば、彼の破竹の勢いも一挙に減速する。
逆にいったん「有効」と判定されたら、彼の勢いを抑えることが制度的に難しくなるだろう。
いずれにしてもトランプ対裁判所またはトランプ対議会の死闘が今後続けられそうだ。
行政トップの資格を欠く言動ゆえに、大統領弾劾の可能性を否定できない。憲法上、下院過半数の同意でトランプ大統領を訴追できる。
弾劾裁判は上院が担当する。最高裁主席判事が議長を務め、上院の三分の二以上が同意すれば大統領を罷免できる。
ニクソンは下院で訴追勧告を受け自ら辞任。A・ジョンソンとクリントンは下院で訴追勧告されたが、上院の弾劾裁判で無罪判決を得ている。
トランプは大衆受けのアメリカファースト。
他国は彼にとってセカンドかサード。まして七面鳥ごときがどうなろうと知ったことではない。
感謝祭の白亜館で移民の国の大統領はいつもの顔でローストターキーに挑んでいたそうだ。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

