キム・ホンソンの三味一体
vol75 アイデンティティークライシス(自己認識の危機)
2017-06-01
先日のことです。今月で6歳と10ヶ月になるうちの娘が「パパは韓国人でママは日本人だったら私はどっちになるの?時々初めて会う人からはラストネームがキムなのに韓国語話せないの?って聞かれる」と質問してきました。「そうだね。□□□は日本人でも韓国人でもあるし、さらにはアメリカで生まれたからアメリカ人でもあるから特別だね」と答えると、娘はニコっと笑って見せたものの、なんだか複雑な表情でした。
以前ロスの韓国系新聞で韓国系2世達の自己認識の危機についての記事を読んだことがあります。H君の両親は、移民一世である他の親と同様に子供の教育を最優先に考えて生きてきました。優秀だったH君も、少しでも親を喜ばしたい一心で他のことなど一切考えず勉強に専念したそうです。やがて名門大学をトップの成績で卒業して百人以上の倍率とも言われる一流企業の試験に見事パスし、最終面接にまでたどり着きました。H君は面接官の質問に次から次へとスムーズに答えました。しかし面接官から「君はコリアンアメリカンだね。ではその文化や価値観、そしてアメリカ社会においてコリアンアメリカンであることについて聞かせてほしい」と言わると、頭が真っ白になりパニックに陥ってしまいました。彼は心の中で「僕はアメリカ人ではなかったのか。誰よりも一生懸命勉強して良い成績で名門校を卒業した。それでも十分じゃなかったのか。コリアンアメリカンであることなど、そんなどうでも良いことなど一度も考えたこともなかった。親に教わったこともない」と叫んでいました。その後、自分のアイデンティティーのことを悩み続けた彼は、数ヶ月後自らの命を絶ち帰らぬ人となりました。
日本人であれ韓国人であれ、アメリカで移民二世として生きることは、一世とは異なる大変さがあります。うちの娘のようにアメリカに住む日本人と韓国人の親の元に生まれた子供たちというのは、さらに複雑な思いでしょう。
今度、私たちの家族のような多文化家族のためのイベントを計画しています。多文化家族に集まってもらい、子供たちのアイデンティティー確立のために何ができるのか、子供たちのそれぞれの文化や言語の教育について、夫婦の間で文化が異なることで陥りやすいミスコミュニケーションについて、みなさんとシェアしながら、つながっていくためのイベントです。
イベントに参加されたいご家族、イベントの企画やアウトリーチや当日の進行やチャイルドケアなどのボランティアをしていただける方がおられましたら、是非お気軽に私の方までご連絡ください! khs1126@gmail.com (310)339-9635
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

牧師、コラムニスト、元ソーシャルワーカー、日本人の奥さんと3人の子供達に励まされ頑張る父親。韓国ソウル生まれ。中学2年生の時に宣教師であった両親と共に来日。関西学院大学神学部卒業後、兵役のため帰国。その後、ケンタッキー州立大学の大学院に留学し、1999年からロサンゼルスのリトル東京サービスセンターでソーシャルワーカーとして働く。現在、性的マイノリティーをはじめすべての違いを持つ人々のための教会、聖霊の実ルーテル教会 (Torrance) と復活ルーテル教会日本語ミニストリー(OC, Huntington Beach)を兼牧中。








