編集部
◆インタビュー連載◆04 西本敬一JETROロサンゼルス 事務所所長
2017-02-01
西本敬一日本貿易振興機構(以下、JETRO)ロサンゼルス事務所所長に、ロサンゼルスでのJETROの展開やプライベートでのライフワークについて聞いた。
(金丸智美)
―地方創生において一番大事なことは何でしょうか。
所長 地方の方々の自信を取り戻すことです。
地方の企業は下請け企業の方が多く、デフレによって自信を失ってしまいました。
岐阜県の陶磁器産業を例に話しましょう。
岐阜の陶磁器産業は日本一で家庭や業務用で使う食器は美濃焼が多く、ピーク時には6割を生産していました。日本国内での需要も落ちて、中国で安い器を作ったので、生産はピーク時の5分の1に縮みました。バイヤーが買い叩くので、単なる下請けとなり、安くすることにしか価値を見出されない。作る誇りは失われました。
このようなことが、あらゆる伝統的な地場産業で起きました。地場産業は経済的なポーションとしてはそんなに大きくないけれど、人々の意識の中では大きいです。工場の社長は、こんなに苦しい思いを子供にさせたくないからと、子供には違う職業を勧める。するとますます産業は廃れていく。
これが、地方の人々の自信の喪失に繋がっていっているのは間違いないと思いました。私は、地方の方々が自信・誇りを回復することをしたいと思っています。
今、まさに海外ではクールジャパンが受け始めています。
日本では中国産の物を使っているけれど、アメリカに目を転じれば、日本のものが良いという人々がいる。日本の外に目を向ければ、評価をしてくれる市場があります。JETROが地方と海外を繋ぐというのは、間違いなく地方創生の自信回復に繋がると信じています。
実際に売るのは大変ですが、「自分たちが想像もしないような海外の人々が買ってくれる」ことは職人にとって、とても励みとなります。この意味で、通常の経済活動を超えた意義があると思っています。
(つづく)
【西本敬一所長】1988年にJETRO入会。2003年は財団法人世界平和研究所に主任研究員と出向。2006年にはジェトロニューヨークセンター次長(事業担当)。JETROのウイーン、ハノーバー、熊本、岐阜にも勤務。その他に宮崎県グローバル戦略アドバイザー、岐阜県高山市海外戦略アドバイザーを兼任。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

