キム・ホンソンの三味一体
vol65 ぜんのうってなあに?
2017-01-12
新しい年をフルタイムの牧師として迎えました。神の導きと恵みに大いに期待して胸が膨らむと同時に「牧師としてどう歩むべきか」自分なりにあれこれ考えています。先日、インターネットニュースで、ベルギー人のカソリック神父で韓国に着任し、57年目にして名誉韓国人として韓国国籍を授与されたセステベンズ・ディディエ神父の記事を読みました。ディディエ神父は1959年に韓国のある貧しい農村に赴任しチーズ造りを教え、その農村はやがて国内で大きいシェアを誇るチーズの生産地となります。また70年代には、独裁政権に抗議し逮捕され迫害に遭います。80年代に入ると、重度の障害者達のためのホームを作って献身的に働いて来た功労を称えられ、特別国籍授与式が行われたそうです。ただ教会の中でイェスの教えを説いただけでなく、イェスがしたように人々と共に生きることが出来た彼の人生は美しいものだと心に染みました。
そしてある日曜日、教会帰りの車の中でのことです。今月で6歳半になる娘が「パパ神様はマジックつかえるの?」と聞いてきました。詳しく聞いてみると、彼女のいうマジックは学校の宿題を一瞬で終わらせることが出来るような超能力のことでした。「そんなんじゃなくて神様は全能なんだよ。」というと「ぜんのうって何?」「そうね、私達一人一人はもちろん、宇宙、そして時間さえもつくれるほど何でもできるということだよ。」「でも学校に行く日とかは校長先生が作ったんでしょう?」「それは違う。時間というものを神様が作ってくれたから、月が12回過ぎると一年と呼びましょうと自分達で分かりやすいように決めただけ。でないとお誕生日とか分からなくなるでしょう?」「うん、それはこまる。でもぜんのうってそれだけ?よくわからない。」「うん、そうね。例えば悲しい時も悔しい時も、すぐとなりで大丈夫よってハグしてくれて一緒に泣いてあげることが出来るのが「ぜんのう」なんだよ。」「でも神様はなぜ見えないの?声も聞こえないし…」「それはみんなに平等にするためよ。生まれた時から目が見えなかったり耳が聞こえない子供達だっているからね。神様はどんなに弱くて何も出来ないと思われてる人も絶対に一人きりにしないんだ。それが全能ということよ。」娘に話しながら、そのような全能の愛の神を伝えることの出来る道具として用いられる幸せな人生にしてください、と神に祈る私でした。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

牧師、コラムニスト、元ソーシャルワーカー、日本人の奥さんと3人の子供達に励まされ頑張る父親。韓国ソウル生まれ。中学2年生の時に宣教師であった両親と共に来日。関西学院大学神学部卒業後、兵役のため帰国。その後、ケンタッキー州立大学の大学院に留学し、1999年からロサンゼルスのリトル東京サービスセンターでソーシャルワーカーとして働く。現在、性的マイノリティーをはじめすべての違いを持つ人々のための教会、聖霊の実ルーテル教会 (Torrance) と復活ルーテル教会日本語ミニストリー(OC, Huntington Beach)を兼牧中。








