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コラム

苦楽歳時記
第226回 南禅寺と新世界

2016-11-23

 子供のころに月一度くらい、日曜日になると早朝から父とともに京都まで足を向けた。午餐には幾度か訪れたことのある南禅寺あたりの料亭で、昼餉の時間をゆっくりとさいて楽しむことにしていた。

 南禅寺の料亭では、お品書の中からえらんで善が運ばれてくるまでの間、長々と待たされることになる。その合間に、清澄閑寂(せいちょうかんじゃく)な趣のあるお庭でも愛でて待つことにするのだ。

 南禅寺といえば湯豆腐で名高い。その節の「湯豆腐御膳」は、おそらく湯豆腐と山菜天ぷら、それから炊き合わせと生麩に、豆腐の田楽。いわいる精進料理である。

 また、そのときの心地しだいでは、「ゆば会席」をいただくこともある。馨香(けいこう)ただよう「引き上げゆば」の風味と食感が、まことに奥ゆかしげに生きていた。  

 往日の晩秋に帰国した折、京大会館において学士会主催の論文発表会に出席したとき、たまたま隣り合わせになった湯川スミさん(故湯川秀樹博士夫人)と知り合えた。

 初対面ながらも意気投合して、湯川スミさんとスミさんの秘書と連れ立ち、南禅寺近傍の料亭『順正』へと向かった。『順正』では清秋の錦絵のような、「東山もみじ会席」をいただいたと、当時の日記に記してある。

 家人と里帰りしたときも南禅寺を訪れた。最初は二人とも湯豆腐を玩味するつもりでいたのだが、湯豆腐ののぼりが立っている粛然(しゅくぜん)とした門先にたたずむこと数分。たゆたうとした挙句に、帰するところ「雅」よりも「大衆」の方をえらんでしまった。

 その後で直ぐに大阪に戻り、下町の「新世界」で串カツとドテ焼きを心ゆくまで味わったのである。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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新井雅之

文芸誌、新聞、同人雑誌などに、詩、エッセイ、文芸評論、書評を寄稿。末期癌、ストロークの後遺症で闘病生活。総合芸術誌『ARTISTIC』元編集長。




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