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コラム

苦楽歳時記
第213回 詩人

2016-08-25

 「雨ニモマケズ 風ニモマケズ・・・ 」

 小学生のとき、担任の先生から宮沢賢治のような立派な人になりなさいと教わった。この詩の最後には「サウイフモノニ ワタシハナリタイ」と結ばれており、賢治自身がサウイフモノニなれなかった。

 「はたらけど はたらけど猶(なほ)わが生活(くらし)楽にならざり ぢっと手を見る」。石川啄木は歌集『一握の砂』の中で生活苦を謳ったが、啄木はそれほど働いていない。いや、自ら進んで働こうとしなかった。

 一生涯を通して徹底して働かなかったのは、三十歳で夭折した天才詩人、中原中也である。「汚れちまった悲しみ」を胸に秘め、詩のことばかりを考えて「ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん」と生きたのだろう。

 知人のNさんは中学生のとき、詩人になることに憧れたが、しばらくして正業をもちながら詩を書けば良いと悟ったらしい。

 「詩人が詩を書くより、芸術論を論ずる方がお金になるとは、アメリカ文化の悲しい姿である」と、嘆いたのはアメリカの詩人オーデンだ。一体、詩人とは何者か?

 キェルケゴールの見解は、「その心には人知れぬ深い苦悩を秘めておりながら、その嘆息と悲鳴とが美しい音楽をかなでつつ流れ出してくるようにできた唇をもつ人間」が、詩人なのだそうだ。

 O・ヘンリーは、短編『詩人と農夫』の最後で、「農場にとどまるべきか、詩を書かざるべきか」。その選択を読者に委ねたが、ローマの哲学者キケロは、あらゆる職業のうちで最も生産的で最も楽しく、最も自由人に適するものは農業であると論じた。

 『農民芸術概論綱要』を書き、肥料相談所を設けた真(まこと)の自由人、宮沢賢治が求めたものとは、罪や悲しみでさえそこでは聖くきれいに輝いている夢の国、「イーハトーヴ」であった。やがて賢治は『銀河鉄道の夜』で、アガペー(神の愛)を発見する。

 あす、八月二十七日は、宮沢賢治生誕百二十年を迎える。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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新井雅之

文芸誌、新聞、同人雑誌などに、詩、エッセイ、文芸評論、書評を寄稿。末期癌、ストロークの後遺症で闘病生活。総合芸術誌『ARTISTIC』元編集長。




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