後藤英彦のぶっちゃけ放題!
第385回 君は英語で道を教えられるか
2016-07-28
例えば日本の温泉マークは外国人に理解できないから、浴する人々を温泉マークに添える等の作業が国ベースで進められている。
二○二○年の東京オリンピックに向けて外国人にすぐわかる絵文字を考案するのだという。
目で見るだけでソレと分かる絵文字をピクトグラムという。
便所の男女別、非常口、レストラン等のピクトグラムは日本人には常識でも外国人に理解できないものが多い。
時事通信社の海外部デスクを務めていたとき盛岡大学で教鞭をとった。
報道デスクを務めつつ教壇に立つ二刀流の難しさを経験したが、N総務局長(のちに社長)の理解を得て五年間教鞭をとった。
「日米事情」一単位、「ジャーナリズム論」一単位、夏季休暇を毎年二週間もらえるその期間内に、集中講義をした。
一九八七年夏のある日、H学長から全学の学生を集めるから講堂で「国際化とは何か」について話してほしいと頼まれた。
日本人のいう国際化とは外国との取引を円滑にすることだ。国内を欧米化することではない。
だから外に向かって貿易の手順、手続き等を欧米に合わせるだけで国際化したと思っている。
しかし島国慣習を固守し、欧米慣習を容れずうわべの国際化を叫ぶから、精神的には江戸の鎖国時代とさほど変わっていないのだ。
大学の土、日は休講になる。ホテルにいても退屈だから田園を散策した。
ある日、バックパックを背負った英国の青年に出会った。
東北路を一人歩きしているという。日本の田舎は魅力的だが、困ることがあると彼は言った。
英語を話さないのと道路標識が日本語で書かれているため道を訊くことも地図で確かめることもできないと嘆いた。
スイスやドイツでこんな経験をしたことがないという。
日本はアルファーベット圏外唯一のG7国だが、まさかここまで、という思いなのだ。
講演では「内なる国際化」を強調した。
国際化を真に願うならピクトグラムだけでなく、道を教える英語と日英併記の道路標識ぐらい徹底しないでどうする。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

