今月の庭仕事
Lesson 164
2016-05-11
今回は、トマトの「尻腐れ病」についてお話します。症状は、トマトのなり口と反対側に黒い大きな斑点が現れます。こうなると食べられず折角の努力が無駄になりますが、どのようにして発症するかを知れば対策も簡単です。
「尻腐れ病」はカルシウム不足が原因となります。カルシウム不足にはだいたい3つほどの原因が考えられます。一つ目は、土壌の中にカルシウムがない場合。酸性土壌では含まれているカルシウムがほかの物質と結合して水と一緒に流されてしまい、結果的にカルシウムの少ない土壌になってしまいます。酸性土壌の日本で野菜などを栽培する時には、カルシウム分が含まれる石灰やマグネシウムの含まれている苦土石灰をまいて、土壌の改良を行いますが、ここ南加の土壌はほとんどがアルカリ性(カルシウムなどのミネラルがたくさん含まれている)なので、この心配はありません。
二つ目は、水をやりすぎると起こる可能性があります。水溶性であるカルシウムは少しずつ水に溶けて流れ出ます。トマトが土に植えられている場合、流れたカルシウムは毛細管現象で少し戻ってくる可能性がありますが、鉢植えの場合は不可能です。このような事態を防ぐには、小規模な家庭菜園においては、卵の殻などを細かく砕いて鉢土の上にばらまき、少し土の中に混ぜ入れると効果があります。細かく砕くと、卵の殻は風化現象を受ける面積が多くなります。また土と混ぜると、適当な水分が殻の周りにあったほうが、乾いているより殻の風化が早まります。
もしこのように面倒なことをしたくない場合は、ホームセンターなどでトマト用の肥料を購入してください。この場合、肥料成分にカルシウム分が入ってることを必ず確かめましょう。トマトの絵が描かれているトマトの肥料袋でも、カルシウムが入ってない時もあるので気をつけましょう。
厄介なことに、「尻腐れ病」は水分不足でも発症します。これもカルシウム分が水溶性であることに関係しています。土が乾燥するとカルシウムが溶け出す水分が少ないので、トマトがカルシウムを吸収できません。
「尻腐れ病」は、上記した二つのことを解決すれば起こらないでしょう。いつも適当な土の湿度を保つように気をつけるのが秘訣です。“土の表面が乾いてきたら水をやる” ということです。土の表面が乾くのは、温度、風の状態、日光の量、使われている土のタイプなど、いろいろなことが影響しあって定まってきます。以上のことに注意しながらトマトを育てれば、まず尻腐れ病の心配はないでしょう。
■今回のコラムニスト:南加庭園業連盟会員の白澤まことさん。連盟主催の野菜セミナーで講師を務める。NTB「チャレンジ・ザ・ガーデニング」出演の経歴もあり。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

