キム・ホンソンの三味一体
vol59 お友達って誰のこと?
2016-07-28
「黒人の命は大事だ」“Black lives matter”の運動が始まった当初、「それはちょっとおかしい。『みんなの命は大事だ』と言うべきだ」といった声もありました。その時僕は、それもそうかな、とよく分からないでいました。しかし、その後同僚の黒人の牧師に教えられて、なるほどと腑に落ちたのです。彼はこういう例えで教えてくれました。「ある住宅街で一軒の家に火事が起こったとする。消防車と救急車がサイレンをならしてやって来た。そして人々の群れの前に止まって一人の消防手が急いで尋ねる。『どの家だ?』そこで人々はその方向を指で指しながら声を揃えて答える。『あの家だ!!』もちろん住宅街のすべての家は大事だ。しかし、今に焼け崩れるかも知れないあの家に駆けつけて火を消すことが今は大事なのだ。「黒人の命は大事だ」と叫ばれることもそれと同じ文脈にある。」すべての事柄は原理原則だけではなく、それが起こっている現実の中で理解されなければならないと改めて思わされました。
先日、教会の幼稚園の園児達に人種差別主義(Racism)をテーマに聖書のお話しをしました。イェスキリストの有名な例え話の中に「良きサマリア人」というのがあります。当時、ユダヤの知識層であった律法学者の一人が、ユダヤ人の隣人/仲間は(当然ユダヤ人だけどあなたは)誰だと思うか、とイェスに質問したことから始まります。「みんなは何人ですか」と聞くと「にほんじーん」という答えが返って来ます。「日本人の友達は何人?」「にほんじーん?」やや自信なさげなお返事です。「ある日本人が暗い夜道を歩いていたら泥棒がきて、殴られてお金も何もかも盗まれて道端に倒れていたんだって。そこに通りかかったいつも良い事ばかり言っていた偉い政治家と立派な学校の先生は素通りしたのに、いつもみんなにあまり優しくされない外国人の人が駆け寄って手当をして助けてくれたんだ。さらにはその日本人を背負って近くの宿に連れて行ってお金まで払ってくれて、『また仕事が終わってから寄るからね』って言って先を急いだんだって。政治家の人と学校の先生と外国人の中で、怪我した日本人のお友達は誰だと思う?」「がいこくじんのひとー」「そう、お友達は同じ肌の色の人同士とか同じ国の人同士という意味じゃないよ。お友達になってあげた人のことなんですよ。」「はなしながーい」「分かった。じゃ困った人を見たらお友達になってあげられる?」「はーーい」
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

牧師、コラムニスト、元ソーシャルワーカー、日本人の奥さんと3人の子供達に励まされ頑張る父親。韓国ソウル生まれ。中学2年生の時に宣教師であった両親と共に来日。関西学院大学神学部卒業後、兵役のため帰国。その後、ケンタッキー州立大学の大学院に留学し、1999年からロサンゼルスのリトル東京サービスセンターでソーシャルワーカーとして働く。現在、性的マイノリティーをはじめすべての違いを持つ人々のための教会、聖霊の実ルーテル教会 (Torrance) と復活ルーテル教会日本語ミニストリー(OC, Huntington Beach)を兼牧中。








