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コラム

苦楽歳時記
vol194 神戸

2016-04-14

 かつて、俳人の楠本憲吉は横浜がアメリカで、神戸はヨーロッパであると述べていた。

 僕は海と山が迫る神戸の都市景観がすきだ。港町と市域の中央に横たわる六甲山との鮮やかなコントラストが、何よりもうっとりとさせてくれる。

 青春時代に暇を見つけては、あこがれの神戸の街を漫歩した。「豚まん」の食べ歩きをしたこともある。元祖豚まんの発祥地は『老祥記』。初代店主の曹 松琪(そう しょうき)が、日本の人に親しみをもってもらえるように、「包子」のことを「豚饅頭」と命名した。

 神戸で最も気に入っている街並みがある。オシャレな商店が建ち並ぶトアロードの坂道をのぼって、途中にある『デリカテッセン』で、スモークサーモンのサンドイッチを買いもとめる。

 坂道をのぼり詰めると北野町にたどり着く。海の見える神戸の欧風な街並みと山あいを背に受けて、一休みしてサンドイッチをほおばる。

 あの頃の北野町界隈は、まるで欧州の片田舎を彷彿とさせてくれていた。一九七七年にNHKの朝の連続ドラマ『風見鶏』以降、北野町は異人館ブームになり、観光化されて人の波が押し寄せるようになってしまった。

 その閑寂な佇まいと風情が消え去り、西欧情緒がたちまち崩れてしまった。僕の心のよりどころが、突如として奪われた境地になったのである。

 十六年前、家人と訪日したときにも、トアロードを歩んで北野町をそぞろ歩きしてみた。いつぞや訪れたことのある『北野クラブ』で、神戸の夜景を満喫しながらフレンチのフルコースを味わった。

 翌日、六甲山頂上のケーブル駅の前で、野生のイノシシが右往左往していた。野生にしては人なつっこい。それから一気に小さな展望台まで駆け上がって、神戸の街並みの全景を望みながら、時の流れを忘れて家人といつまでも寄り添いながら、メロウなひとときを過ごしたのである。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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新井雅之

文芸誌、新聞、同人雑誌などに、詩、エッセイ、文芸評論、書評を寄稿。末期癌、ストロークの後遺症で闘病生活。総合芸術誌『ARTISTIC』元編集長。




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