苦楽歳時記
vol192 よもやま話2
2016-03-31
ホテルのサンデーブランチバッフエに訪れたカップル。
二人とも生牡蠣には目がないので、幾度もそのコーナーを往復していた。山盛りの牡蠣の殻をウェイターがそのつどさげにくるので、カップルは気恥ずかしい思いに陥っていた。
食事もそろそろ終わりかけた頃のタイミングで、ウェイターが「デザートはいかがですか」。カップルは「結構です」と返答した。
しばらくして最後に、生牡蠣をもう一度とりに向かった。カップルのテーブルを通りかかったウェイターは、ニヤリと笑みを浮かべて耳元で、「これは、オイスター・デザートですか!」。
二人は穴があったら入りたいと赤面した。
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時代劇を観ていて何がしらけるかというと、武士の乗っている馬がサラブレッド。サラブレッドは明治十年に日本へ輸入された。
せめて日本の在来馬を用いるべきだ。例えば、北海道の道産子、長野県の木曽馬、長崎県対馬の対州馬など。
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一世を風靡したジャズ界の巨人、アート・ブレイキー(ドラムス)が、一九六一年に初来日したとき、熱狂的なファンから記念写真をせがまれた。「オレは黒人だぞ。一緒に写真に収まってもいいのか」。(当時、米国ではあからさまに人種差別があった)
彼は帰国を前に、「私は今までに世界を旅してきたが、日本ほど私の心に強い印象をのこしてくれた国はない。演奏を聴く態度はもちろんだが、何よりもうれしいことは、アフリカと日本だけが我々を人間として歓迎してくれたことだ。ヒューマンビーンとして!」。
後に、アート・ブレイキーは日本の女性と結婚する。一九九〇年十月十六日、満七十一歳没。
アート・ブレイキーとジャズメッセンジャーズの「Moanin’」は、テレビジャパン『美の壺』のテーマ曲。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

