後藤英彦のぶっちゃけ放題!
第354回 超有名人の〝握手”シーン
2015-12-10
一九七五年五月七日のことだった。来日した英女王エリザベス二世が手袋を脱いで昭和天皇ご夫妻と 交わした握手のシーンが話題になった。
宮内庁詰めの友人によると、皇室担当記者に差し延べた右手は白色の優雅な手袋で覆われていたという。
そう言えば中国の習近平とも手袋のまま握手をしたそうだ。
エリザベス女王が手袋を脱いで握手をする相手は日本の天皇ご夫妻とローマ法王ぐらいだろうと友人は言っていた。
握手も女王の重要な仕事だが、一日千人以上の人と握手をするとなると話は別だ。
しびれる右手に腱しょう炎の症状が出てくる。だから女王の握手は手袋の右手を相手の右手にそっと添えるだけだ。
玉音放送で敗戦を知った日本人は正直ほっとした。そして泣いた。
失ったものが多すぎた。国は国力を失った。母は息子を失った。妻は夫を失った。
昭和天皇は「国民を励まそう」と全国行脚に出られた。老若男女、日の丸の小旗を振って天皇を出迎えた。
九州の炭鉱町を訪ねたときのこと。坑内で天皇を迎えた現場監督が天皇に声をかけた。
「天皇様、よくお出でくださいました。握手を賜りますれば・・」
昭和天皇は一瞬後ずさりをされたそうだ。現場監督の対応が思いがけなかったのだろう。
天皇は気を取り直し「いや、ここは日本式の挨拶で」といい、軽く低頭で応じられたそうだ。
高位の外国人以外、昭和天皇が日本人と握手をした例などないようだ。
天皇と握手をした経験が私にもないが、米大統領とは二度ある。
一度はフォード氏とカリフォルニアのコーアチェラバレーで。二度目はカーター氏と東京で。
米人記者数人と私は引退したフォード氏を自宅に訪ねた。カーターセンター建設資金を求めていたカーター氏とは帝国ホテルで会った。
手の感触はカーター氏のほうが柔らかだった。フォード氏は鷹の目で私を直視し握手した。
相手の目を見て握手する点が二人に共通していた。手の感覚と目の動きで相手を瞬時に判断しているようだった。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

