後藤英彦のぶっちゃけ放題!
第353回 LAで気を吐く絵本作家関さん
2015-12-03
「二足のわらじを履く」という。江戸時代に生まれた言葉だ。
二つの仕事を持っているが、両仕事ともに「よい腕」をもっている場合によく使う。
LAで活動するサニー関さんのケースによく当てはまる。絵本作家であると共に川柳作家兼選者でもあるからだ。
名高い日大芸術学部の写真科を出て渡米、華やかなハリウッドのファッション写真で身を立て、写真館の経営者にもなった。
ところが二○○○年ごろからのデジタル時代の到来で、どんな写真もインターネットで手に入るようになった。
オリジナル写真の価値が暴落、やがて食えなくなった。
一からの出直しだ。美術学校で絵画や漫画を学んだ.絵本画家になって白人少女を主人公に作品を描いたがダメだった。
日本人にしか描けない物語で勝負と、日本の民話をアレンジし「まねき猫の話」を描いた。
当たった!アラビア語に訳され米団体の推薦図書にも選ばれた。
二作目「最後のカッパ」もすぐ売り切れた.三作目「ゆこちゃんとダルマさん」は豪州の日本語クラスの教材になった。
このほど発売された四作目「こけしのはなし」はこけしの伝聞をサニー流にアレンジした。
サニーさんを「二足のわらじを履く」人と言ったが、本職は写真家、「三足のわらじを履く」人と言い変えよう。
童話といえばイソップ、グリム兄弟、アンデルセン、日本なら桃太郎、金太郎、浦島太郎、かぐや姫、一寸法師、宮沢賢治を連想する。
しかしサニーさんは絵本作家、ひと味違う。
分類的にはエリック・カールの「はらぺこのあおむし」、デイック・ブルーナの「かいじゅうたちのいるところ」」、ベアトリス・ポターの「ピーターラビットのおはなし」などに近い。
サニーさんは着想や粗筋を事前に妻のジュデイさんに読んで聞かせる。反応がよいと応援歌になるから筆に力が入る。
九人の子供に恵まれ孫もいる。川柳に「孫の名に変えて絵本を読んでやる」というのがある。
彼も同じことを孫にしているはずだ。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

