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コラム

苦楽歳時記
vol177 柿木の葉寿司とバッテラ

2015-12-10

 十五年前の師走に、家人と二人で奈良の法隆寺を訪れたことがある。昼をすぎていたので、近くの食事処で腹ごしらえをしてから拝観することにした。

 食堂は広々としていて、時節はずれの平日なので数人の客しかいない。僕たち二人は、立て看板に書かれている「名物、柿木の葉寿司」を注文した。

 しばらくして、おばちゃんが「柿木の葉寿司」を運んできた。サバ、サケ、小鯛などの切り身を酢飯の上にのせて、柿木の葉で包んだ押し寿司だ。

 醤油をつけて食べようとした矢先に、給湯所に佇んでいたおばちゃんが、猛烈な勢いで僕たちのテーブルへダッシュしてきた。「柿木の葉寿司は、お醤油つけて食べたらあかん」。

 「柿木の葉寿司」も、「大阪寿司」(押し寿司・箱寿司)も、醤油をつけて食するのはいけないことだとわかってはいたが、少し醤油をつけて食べる方が美味であると、日ごろから感じていたのである。

 最後の一つくらい醤油をつけて食べようと思い、おばちゃんに見つからないように、醤油をつけようとした丁度そのとき、おばちゃんと目が合った。おばちゃんは首を横に振っている。

 帰り際に「柿木の葉寿司」を土産用に、折り詰めにしてもらった。おばちゃんから受けとるときに、「醤油、つけたらあかんよ」と、駄目押しをくらってしまった。

 LAに戻ってからしばらくして、寿司店で「バッテラ」を食するときに、食堂のおばちゃんの顔を想い浮かべて、わさび醤油をつけていただいた。

 「バッテラ」も「大阪寿司」である。ワサビ・醤油をつけることは、本来はマナーに反する。

※ 柿の葉寿司は、奈良県、和歌山県、及び石川県の郷土料理。サバ、サケ、小鯛が主なネタだが、奈良県と和歌山県では穴子や椎茸。石川県ではカツオを地域特有のネタとして使用している。また、柿の葉は殺菌効果があり保存に適する。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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新井雅之

文芸誌、新聞、同人雑誌などに、詩、エッセイ、文芸評論、書評を寄稿。末期癌、ストロークの後遺症で闘病生活。総合芸術誌『ARTISTIC』元編集長。




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