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コラム

苦楽歳時記
vol172 詩碑建立十周年

2015-11-05

 リトル東京のど真ん中に、重さ一・七トンの詩碑が建立されてから十年の歳月が流れた。大理石に刻まれているのは、日系詩人、加川文一の『海は光れり』。

 僕の目には、この艶やかな岩石のモニュメントが、『鉄柵』や『南加文芸』で活躍されていたつわものたちの、友誼(ゆうぎ)に厚い証しとしての金字塔に見えるのだ。

 この『海は光れり』という詩は、冒頭の加川夫人の短歌を含めて、近代抒情詩の、そして移民文学の傑作である。

 「今日も海は光れり」。この脈々たる希望の精神は、文一の妻に対する限りない包容力の表明である。文一の絶唱はリトル東京に憩う人々の、心のよりどころになって早十年が経過した。

 除幕式では、『南加文芸』の同人であった中山真知子さんが、詩の朗読に入る前に、天国にいる加川文一に届けとばかりに、「加川文一、あなたの詩碑が建ちました。あなたが暮らしていた日本人街に建ちました…… 」。

 朗々と語る口調が、まことに感動的であった。

 『南加文芸』の魂は不滅である。そして、この地で文学を愛好する者が、数多くいることを認識させられた。

 黄昏に、僕は独りで色なき風の中で佇み、文一の詩碑と対峙しながら詩文を音読してみた。

      ◆     ◆

 妻よ
 今日も海は光れり
 人の住む陸を抱きて
 するどく海は光れり

      ◆     ◆

 結びで感極まった僕の目から、一掬の涙がこぼれ落ちた。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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新井雅之

文芸誌、新聞、同人雑誌などに、詩、エッセイ、文芸評論、書評を寄稿。末期癌、ストロークの後遺症で闘病生活。総合芸術誌『ARTISTIC』元編集長。




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