苦楽歳時記
vol171 よもやま話
2015-10-29
昔、日本へ出張に赴くと余暇を利用して、ときおり『黒門市場』(大阪)に足を運んだことがある。あるとき、母親と息子が営んでいる小さな鮮魚店に目をとめた。
トラふぐとの身と、てっさ(ふぐ刺し)を購入するためである。この店のおばちゃんが、「言い値で買ってくれる人は珍しい。何か、おまけしとこ」と言って、通好みの魚のアラをこれでもかというくらいに、どっさりと大きな袋に詰めこんでくれた。
タラのアラは『マルカイ』。刺身は『ミツワ』。弁当、寿司類、オーガニックの食材が充実しているところは『ニジヤ』。
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某スーパーマーケットの二階で、スタッフ専用のドアから出てきた女性に、知己が「ちょっと、お尋ねしますが」と言うと、「私に話しかけないでください」と言う。
知己は「売り場の場所を教えていただきたい」と言うと、「私は今から休憩なので、話しはしたくありません」と断られてしまった。
知己は「あなたのお名前を教えてください。後で、マネージャーに報告します」。
二人の会話を目の当たりで聞いていた僕は、不埒な従業員を雇用している側にも、問題があるような気がしてならなかった。
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NHKはつい最近まで、「太古の昔」なる言辞を使っていた。「太古」というのは「大昔」のことである。従って、「大昔」の「昔」になる一般的には重複表現。
但し、「太古」という言葉は、「太古代」=「始世代」。直訳すれば「始世代の昔から」となる。
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映画『未知との遭遇』が、日本で公開されたのは一九七八年。以来、「遭遇」(そうぐう)という熟語が頻繁に使われ始めた。
「遭遇」とは、思いがけずに人や物事に不意にであうことをいい、ふつうは好ましくない状況に用いる。例えば「山中で熊に—する」、「事件現場に—する」。
前後の文章よって違いはあるが、普通は「仲良しの友と—する」、「駅前で父と—する」とは用いない。最近観た番組の中で、NHKの女性キャスターは、またもや「遭遇」を誤用していた。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

