編集部
2015年夏のイベントを振り返る!第1弾 ースペシャルオリンピックス(SO)夏季世界大会―ロサンゼルスー
2015-09-26
金メダルに輝いた日本女子バスケットボールチーム
9月も終わりに近づき、来月にはハロウィーンが待っている。完全に夏が過ぎ去る前に、紙面で伝えれなかった「2015年夏のイベント」を振り返る。
第1弾は、スペシャルオリンピックス(SO)夏季世界大会―ロサンゼルスを取り上げる。177カ国から約1万人のアスリートとコーチが参加し、7月25日~8月2日の9日間、25種目の競技で熱戦が繰り広げられた。日本からは118人の大選手団が11競技に参加した。中でも本紙が注目したのはバスケット。会場となったUSCでは、男子、女子、ユニファイドの部門で連日、アスリートたちがこれまでの練習の成果をぶつけ合った。
中でも、女子のバスケットチームは、東京、山口、福岡の3県から選ばれた代表選手10人が、決勝戦でインドと対戦して、21対20で勝利し、金メダルに輝いた。3県に股がる代表選手をどのようにまとめて、優勝に導いたのか、ヘッドコーチの内藤清正さん、コーチの三上真理さん、清水千代美さんにインタビューした。
Q スペシャルオリンピクスという国際大会に出場するにあたり、課題がありましたか?
内藤ヘッドコーチ 一生懸命ボールを追いかける、果敢にシュートを狙っていく、果敢に攻める、守っていくことです。それと、スピードのバスケット。これは、他のチームも同じだったと思いますが、横の展開を早くというのを課題に練習してきました。
スピードの部分は、この世界大会で体格格差をまざまざと見せつけられました。アイルランドとベネズエラのアスリートとは体が違いますね。基本的な大きさであったりとか、力であったりとか、これが世界なんだって。
他のチームは、エースが点数をとるチームが多かったのですが、我々は、チームででボールをとりにいき、チームで守り、チームで奪ったボールを素早く運ぶ。組織力なんです。この中で献身的にチームのために働くアスリートが出てきました。山本真佐世と口田摩耶子というアスリートです。彼女たちは、どちらかと言えばチームでもおっとりタイプ、優しいタイプで、リズムもハイテンポではありませんが、いざとなったら、自分の役割は守ることだと、守ることに一生懸命徹してくれました。特に本戦が始まると、この二人がすごい力を発揮してくれました。点数を取ったり、他に目立つアスリートはいますが、この二人がこの大会の立役者だだと、他のアスリートの前でも話しました。こういうアスリートが出てきたことが良かったです。
Q この大会を通して、アスリートたちはどんどん変化しましたか?
内藤ヘッドコーチ 会場のUSCに入ってから、アスリートたちが変りましたね。その変化の度合いは1人1人異なりますが、間違いなく成長しました。思い切ってプレーができた感は、ありますね。
Q 試合中、いろいろとアスリートたちに大きな声で声をかけていました。
内藤ヘッドコーチ 決勝戦は、インドチームがよく頑張って、大差だったのを、21対20までよく追いつめてきました。我々は、途中で気が抜けしまって慌ててしまった。
特に決勝戦は、このチームでできる最後の試合だったので、全員を均等に出したい気持ちがありましたから、アスリートにはコートに出ている1分1秒を大事に使ってほしかったです。「なんのためにここまでやってきたんだ、この大会のためにやってきたんだから、ここでやらないとダメでしょ」って、こういう想いが、アスリートたちがこれまでやってきた頑張りに対する想いが、激を飛ばしました。なんとか発揮してほしいってね。
決勝戦で激を飛ばす内藤コーチ
Q 「休むなー」と激が幾度も飛びました。
内藤ヘッドコーチ 休んでしまったら、悔いが残るんですよ。なんであの時に足を止めちゃったんだろう、なんであの時、手が挙がらなかったんだろう、そこの後悔が、私はすごく嫌だったんです。できる限りのことをやって、それでダメなら諦めもついて、清々しい結果にはなるだろうって。だから、できる限りのことをやってほしくて、「休むなー」と声をかけました。
3人のコーチ(赤いポロシャツ)から同時に同じ指示が出た!
Q バスケット女子は、3県からの代表選手が集まったチームでしたね。普段は離ればなれなので、どのように連携をとったんですか?
清水コーチ 内藤コーチが、アスリートのファミリー、アスリート本人、私たちコーチ、それからSO日本、全てに素晴らしい気配りをしてくれました。例えば、親御さんは、子供たちのことで指摘を受けると、少し信頼関係に響いたりしますが、内藤コーチと三上コーチは、アスリートのことをとてもよく理解しているので、親御さんに代案を出すんです。
そして、そのやりとりもコーチ全員にまわして、みんなでフォローしてみんなで共通認識を持ちました。だから、いろいろ起きてもヒビが入らなかったんだと思います。内藤コーチは、人を大事にする人です。それを私たちもアスリートも分かっています。それで、上手く世界大会までこれました。
内藤コーチ 自分だけ情報を持っているのは怖いし、辛いんですよ。だから、全てをさらけ出して、「これはどうでしょうか」と確認をしながら前に進みました。ファミリーもアスリートも不安が多いので、情報を多く発信しました。同じ立場の情報を持ち、みんなで同じ目線を持つ。ここは努力したところかもしれません。
試合中、指示をだす内藤コーチ(左)とスコアを付ける三上コーチ(左から二人目)
Q 女子チームですから、女性コーチの役割は重要だったのではありませんか?
三上コーチ 私の息子は自閉症で、息子が7歳の時に初めてスペシャルオリンピクスに参加しました。私はバスケットが専門ではありませんでしたが、他のアスリートを見ても、おそらくこの子はこんなことを感じて止まっているんだろうな、この子はおそらくこういうことで不安定なんだろうなって分かるので、バスケットの技術を伸ばすよりは、日常生活の向上の方に心を砕きました。
アスリートが女の子なので、男性コーチでは気付きにくいところや言いにくいことがあるので、そのあたりは母親目線でアドバイスをしたり、叱ったり褒めたりというところをやってきました。
内藤コーチ 清水コーチはうちの推進力でした。私がやろうとしたことにも後押しをしてくれて、「やろう、いいじゃない」って言ってくれました。前に押していく力があるんですよ。それに、まずチームが明るくなりました。
3人のコーチたちがしっかりと連係プレーをしたことで、それぞれの役割を発揮し、アスリートたちも金メダルを手に入れることができたのではないだろうか。
(注)内藤 清正さん SON(ニッポン)東京、三上 真理さん SON(ニッポン)東京、清水 千代美 SON(ニッポン)山口。
表彰台に向って、手を振る内藤コーチ(中央)と秋田県人会の敦子リーさん(内藤さんの左)
=Tomomi Kanemaru
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。