苦楽歳時記
vol165 卵かけご飯と茶漬け
2015-09-17
二〇一三年(平成二十五年十二月)、「和食と日本人の伝統的な食文化」が、ユネスコ無形文化遺産に登録された。それを機に、今まで以上に和食文化が世界に浸透していくことになるであろう。
和食の原点と申すべきか、日本人であれば誰もが食べたことのある和食の古里的な二品といえば、卵かけご飯と茶漬けだと思う。和食を褒める外国人でさえも、その伝統的な妙味を知り尽くすのは容易ではないと思う。
日常的に生卵を食する慣習があるのは、世界広しといえど日本のみである。「生卵を食べるのは、日本人とロッキーだけ」というようなことが、海外ではよく言われている。
(注釈) 一九七六年のアメリカ映画『ロッキー』で、試合前に主人公が生卵を何個も飲むシーンは有名。
スーパー等で販売されている安価な鶏卵でも、十分に味わい深いものがある。日本の卵は世界に類を見ない高度な安全基準を備えているので、安心して生卵が食べられているのだ。因みに生のものを「卵」、調理されたものは「玉子」という。
『鶏鳴新聞』によると、鶏卵の一人当たりの消費量が最も多い国はメキシコ。日本は第二位。アメリカは第七位。
高級ブランドの卵になると、更に旨味の極致が味わうことができる。最高級卵「輝」、アクアファーム秩父の卵は一個五八三円。贈答用の桐箱入りは、二十個で一万五千円。
一個五十五円のヨード卵と、一個百円前後のブランド卵でも、十分に満足いく味覚が堪能できる。
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広辞苑によると茶漬けとは、「飯に熱い茶をかけたもの。茶漬飯」とあるが、ダシをかけた「越後茶漬け」というものも存在する。ただし近年では、ダシ茶漬けと呼ばれるようになった。
若かりし頃の盛夏に、湯を沸かすのは面倒で麦茶で茶漬けを味わうようになると、たちまちはまってしまった。その後、季節には関係なく、冷たいお茶で茶漬けをいただくようになってしまった。古くから白湯茶漬け、冷水茶漬けなるものが存在していたのである。
元読売巨人軍の新浦壽夫投手は、サイダーをかけて茶漬けをするという。酒豪(高知)県では、清酒をかけて酒茶漬けを味わう者もいる。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

