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コラム

苦楽歳時記
vol163 七月三十一日の手術

2015-09-03

 ラディエーション加療後、転移した右胸の骨癌腫がむき出しになり出血が止まらないので、この度手術を施した。

 執刀医からは、三十分から一時間ていどで終わる簡単な手術だと事前に説明を受けていた。ところがメスを入れてみると、肺に穴が開いていて止めどもなく出血しているので大手術となった。

 術後から二日目。肺には、まだチューブが差し込まれているので、肉体に激痛がみなぎる。身体中に絡みつく各種医療機器のコードのために、右半身麻痺で身動きがとれない。つらくてうめいて、諸々のストレスがない交ぜになっていた。そのとき、突として意識を失ってしまった。

 モニターの数値は下がる一方で、傍らにいた家人は直ぐにナースに知らせてから、彼女自身も廊下に出て「エマージェンシー!」と叫んだ。直ぐに館内放送が流れて、二十人くらいのドクターとナースが集まったという。

 ドクターたちの賢明な処置により、約三十分後に、徐々に意識が戻り始めた。吾輩は黄泉(さんず)の川を渡りかけていたのだ。

 退院後の翌日に、また出血が止まらなくなり病院のエマージェンシーへ駆け込んだ。再び入院する羽目になる。

 リカバリールームでは、ドクターの粗療法が始まった。麻酔をかけないで傷口のところから、ドロドロした黒ずんだ血液を絞りだした。その痛さときたら筆舌に尽くしがたい、絶叫と悲鳴を伴っていた。

 一般病棟に移ってからは、毎日種類の違う抗生物質の点滴をしてもらった。どうやら手術中に院内感染に罹り、インフェクションを起こしたらしい。

 退院後も、しばらくは体調不良と食欲不振が続いていた。大きな手術を何度も受けてきたが、この度の手術は、ほとほと憔悴(しょうすい)しきってしまった。もう一度手術があれば、生き抜いていく自信がない。吾輩は柔弱に陥ってしまったのである。

 しばらくして、静寂の彼方で祈っていると心づかされた。聖霊が吾がうちに宿っている。吾輩は三位一体の神の慈愛の下に、生かされていたのだ。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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新井雅之

文芸誌、新聞、同人雑誌などに、詩、エッセイ、文芸評論、書評を寄稿。末期癌、ストロークの後遺症で闘病生活。総合芸術誌『ARTISTIC』元編集長。




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