苦楽歳時記
vol158 「冷や麦忌」と「そうめん」
2015-08-06
「父しのび 自由の国で 冷やし麦」(筆者)
あす、八月一日は父の祥月命日。生前の父は、冷や麦がたいそう好きであったので、命日には家族みんなで、冷や麦を食す慣わしになっている。今年で二十八回目を迎える「冷や麦忌」なるメモリアル。
母と姉(三女)は、奈良に住んでいるので、毎年、風薫る季節になると「三輪の手延べそうめん」と「冷や麦」を送ってくれる。
そうめんの産地は、三輪そうめん(奈良県)、揖保乃糸(兵庫県)、小豆島そうめん(香川県)などが有名。
奈良県桜井市にある日本最古の『大神神社』は、素麺発祥の地として名高い。今からおよそ一三〇〇年前に、この地で最初のそうめんが作られたという。
そうめんは細いものほど美味(高級品)である。極細のそうめんは、つゆが絡みやすく喉ごしも良くなる。それは、熟練した素麺師でなければ作れない。量産することもできないから、値が張るのである。
安価でウマイ、「三輪の手延べそうめん」を食する方法が一つある。それは、「訳あり手延べ」といって、色味が不揃いであったり、通常よりばらつきがあるため贈答用には向かないが、美味しさは変わらない。
今年、奈良から届いたものは、「訳あり手延べ」。昨年まで、初夏に送られてきたものは、『三輪そうめん山本』の超極細。商品名「白髪」直径0・3ミリ。
JAS規格よると、うどんは直径1・7ミリ以上。冷や麦は、直径1・3ミリ以上1・7ミリ未満。そうめんは、直径1・3ミリ未満。
冬季になると、極細のそうめんはもったいないので、標準サイズのそうめんを使って、温かい「にゅうめん」にして味わうことにしている。
「にゅうめん」の語源は、「煮麺」の発音がなまったものである。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

