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コラム

苦楽歳時記
vol149 孤独について

2015-05-28

 一九九三年の三月、覚醒剤所持の現行犯で元プロ野球選手の江夏 豊が逮捕された。法廷で弁護に立った江本孟紀氏を始めとする数人は、「ピッチャーは孤独である」という。孤独故に覚醒剤に手を染めたのだというコメントを新聞の記事で読んだことがある。

 人間はみんな孤独である。ピッチャーだけではない、孤独と闘って生きているのだ。往時の記事を見て、「あまったれるな」と憤りを憶えた。

 今年の二月に発刊された『善と悪』(江夏 豊・松永多佳倫 共著)で、江夏のイメージは孤独な一匹狼。しかし本書では、「俺は野球をやっているときでも孤独なんて思ったことはない」と、告白したのである。

 ドイツの哲人ニーチェは、「孤独を味わうことで、人は自分に厳しく、他人には優しくなれる。従って、孤独は人格が磨かれる」と言い放つ。

 孤独にも種類がある。他人から強いられた場合には「隔離」。社会的に周囲から避けられているのであれば「疎外」。単に一人になっているのであれば「孤立」。他人を寄せ付けず気高い様子は「孤高」。文学的には「寂寥」(せきりょう)、「寂寞」。

 孤独は必ずしも否定的なものではない。同じくドイツの哲学者マックス・シュティルナーは、「孤独とは、知恵の最善の母乳である」との格言を遺している。

 アメリカとイギリスのパーティーを比較した場合、アメリカのパーティーでは一人で寂しく佇んでいると、周囲のものが声をかけてくれる。

 イギリスの場合は、一人で静かに佇んでいるのは孤独を愛しているのだと判断されて、誰も声をかけない。声をかけることは、むしろマナー違反ですらあるという。

 古代ローマの政治家キケロは、「私が孤独であるとき、私は最も孤独ではない」という名言を遺している。

 僕も、これに似た一行詩を作っていた。「不安でないから恐ろしく不安、安心して不安に過ごしたい」。

 孤独について、前田夕暮が後世に伝えた趣のある言の葉に、深く感銘を憶えた。「孤独の寂しさが人間の心を静かに燃やしてくれる」。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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新井雅之

文芸誌、新聞、同人雑誌などに、詩、エッセイ、文芸評論、書評を寄稿。末期癌、ストロークの後遺症で闘病生活。総合芸術誌『ARTISTIC』元編集長。




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