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コラム

苦楽歳時記
vol147 チップ

2015-05-14

 時は一九八〇年、ロサンゼルスに来てまだ間もないころ、ダウンタウンの西外れにある安価なホテルに投宿していた。和食が食べたいとの想いに駆られて、近隣のヒルトンホテルまで歩いた。

 ヒルトンホテル内の日本食レストランで、僕は刺身と天ぷらのコンビネーションを頂くことにした。最初は酒をたしなむので和服姿のウエイトレスに、味噌汁は後からお願いしますと伝えた。三十半ばのウエイトレスは、僕に聞こえるくらいの小声で、「こんなの初めてだわ」と、小言を残して厨房に消えてしまった。

 結局、味噌汁も酒も定食も、みんな一緒に出てきた。僕は悪いことを言ったのか、マナー違反でもやらかしたのかとやきもきしたのである。

 会計を支払う段階になって明細に目を落とした。メニューに記載されていた金額よりも高かった。僕は先ほどのウエイトレスに尋ねてみた。「この代金にチップは含まれていますか?」。ウエイトレスの答えがこうだ。「含まれていますといえば含まれています。含まれてないといえば含まれていません」。

 計算をしてみると、代金に二十パーセント分のチップが加算されていたのだ。このウエイトレスは、あわよくばチップを二重取りしてしまおうと考えていたに違いない。やれやれ、高級ホテルのレストランにして、このあり様である。先が思いやられると痛感したしだいだ。

 十八、九年前にラスベガスに赴いた際にも、ラスベガス・ストリップから少し離れた老舗の日本食レストランに四人で訪れた。あまりもサービスが良くなかったので、後でチップを少なめに置くことに決めていた。

 明細書を見ると、合計金額だけが記載されている。こまごまとした飲食代金が記入されていない。僕は若い女将さんに問いただした。

 女将さん曰く「日本からお越しなられた観光客の方だと思いましたわ」

 僕は飲食代の詳細を明記してくれと頼んだ。

 驚いたことに三十パーセントもチップを奪おうとしていたのだ。しかもタックス込みで。観光客が利用する度に、高額なチップを上乗せして、何も知らない日本人観光客をカモしていたのである。許し難い行為だ。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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新井雅之

文芸誌、新聞、同人雑誌などに、詩、エッセイ、文芸評論、書評を寄稿。末期癌、ストロークの後遺症で闘病生活。総合芸術誌『ARTISTIC』元編集長。




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