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コラム

苦楽歳時記
vol139 ポーと猫と狂気

2015-03-19

 過去のワシントン・ポスト紙を図書館で閲覧していると、大変興味深い記事を見つけた。

 エドガー・アラン・ポーの死因は、飼い猫の一匹にかまれて狂犬病に罹った可能性が高いと指摘する。メリーランド大学医学部の心臓病専門学者、マイケル・ベニテス氏の研究報告を掲載していた。

 ポーの死因については、酒場で酔いつぶれて錯乱状態となり、戸外で行き倒れになったというのが定説である。

 狂犬病の末期患者の特徴として水を受けつけない症状が現れるが、なぜ、ポーは水回りのある酒場へと立ち寄り、アルコールを死ぬ間際まであおったのか、あくまでも素人考えの範疇で疑問が残る。

 また、狂犬病の症状の一つである凶暴性であるが、往時の医療において、鎮静剤の投与によって症状をわずかでも緩和させることは可能であったのか確認をしたい。というのは、ポーの臨終の言葉は、「主よ、この哀れな魂をお救いください」と、つぶやきながら息を引きとったと文献に記載されているからだ。

 主の御手に全てを委ねたポーの最期は、狂犬病に蝕まれているにしてはあまりにも安らかすぎたからである。

 『黒猫』を書いたポーは、アメリカでは珍しいデカダンスの作家であり詩人であったが、それらしく、鬱病、精神分裂病(統合失調症)、神経症、アルコール依存症、麻薬中毒、てんかん、性格異常などの病歴を一手に引き受けて生きていた。

 『牡猫ムルの人生観』を書いたドイツのホフマンは、クレッチマーという精神科医に、精神分裂気質であることを指摘された。

 『イギリス猫の胸の悩み』を書いたフランスのバルザックも、桁外れの異常な浪費癖に吃驚したツヴァイクに、狂気の烙印を押された。

 神から狂気という恩寵(おんちょう)を受けて、創作意欲がかき立てられ、卓越した文学作品の数々を後世に遺した文士たち。彼らにとって狂気とは、きっと英知であり、創造であり、生きた証しであったに違いない。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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新井雅之

文芸誌、新聞、同人雑誌などに、詩、エッセイ、文芸評論、書評を寄稿。末期癌、ストロークの後遺症で闘病生活。総合芸術誌『ARTISTIC』元編集長。




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