後藤英彦のぶっちゃけ放題!
第312回 大相撲は伝統に胡坐をかいている
2015-02-12
「ビデオ見たけど、子供でも分かる相撲だもんね。なぜ取り直しなのか。もう少し緊張感をもってやってもらいたい」
「ビデオ判定をするのはお相撲さんでしょう?取り直しの重みを一番分かっているはず。肌の色は関係ないよ」
大相撲初場所十三日目、稀勢の里戦取り直しに対する横綱,白鵬の審判部批判だ。
これに対し北の湖理事長は「横綱としてあるまじき発言。肌の色で勝負審判を決めていない」と審判部を擁護した。
横綱審議会の内山斉委員長は「未熟さをさらけ出している」と白鵬の自覚を促した。
史上単独三十三回優勝を達成するかどうかの大事な一番だった。攻めたのは白鵬で、稀勢の里は防戦一方だった。
仮に同体だったとしても相撲の勢いは白鵬のほうにあった。取り直しで白鵬が勝ちを収めたものの後味の悪い幕切れだった。
大相撲に言論の自由はないようだ。周囲の圧力で白鵬は陳謝した。
大相撲は国技というが、胸を張ってそういえるのか。三横綱はすべてモンゴル出身者だ。
幕内力士四十二人中、外国力士は十六人いる。
うち十一人がモンゴル出身者だ。規定で「一部屋外国人枠一人」と決まっているから、この数字は驚異的だ。
モンゴル勢若手の逸ノ城、照の富士も横綱の有力候補だ。日本大相撲の看板をモンゴル大相撲に変えろといわれても仕方のない体たらく。
日本大相撲は古代の伝統を引き継ぐ国技だとし、型のみの伝統の上に胡坐をかいている。
現実をみることだ。横綱一人いないのに伝統、国技を強調しても空しいだけではないか。
二○○九年は民間出の正田美智子様が皇太子妃となって五○年、金婚祝いの年でもあった。
皇后は談話を出した。「型のみで残った伝統が社会の進展を阻んだり伝統という名の下で古い習慣が人々を苦しめていることもあり、この言葉が安易に使われることは好ましく思いません」
相撲人は皇后の談話をどう受け止めたのか。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

