後藤英彦のぶっちゃけ放題!
第301回 七条解散は解釈上のまやかし
2014-11-18
日本の政治はまやかしに満ちています。
安倍首相が衆議院の解散を断行、十二月十四日に選挙が行われます。
『政治とカネ』疑惑で、国会審議が滞る事態を打開、消費税増税の先送り、アベノミクスの信を問おうとの姿勢です。
衆議院定員四百七十五議席、自民、公明両党は計三百二十六議席を占めています。
多少の議席を失っても両党で過半数を維持できるとの判断がきっとあるのでしょう。
日本の政治はまやかしに満ちていると冒頭でいいました。
「まやかしとはなんだ」。これを読んだら安倍首相はきっと激怒することでしょう。
つまり解散権の解釈に国会軽視のまやかしがあるのです。日本の首相には衆議院を解散するに二つの道があります。
一つは衆議院にダメ出し(内閣不信任決議)された場合、全大臣を辞めさせ新大臣で出直すか、衆議院を解散するか。どちらかを選ばなければなりません。六九条解散といいます。
もう一つは好きなときに衆議院を解散できる首相の権能で、俗に七条解散と呼びます。
憲法第七条に『天皇は内閣の助言と承認に基づいて衆議院を解散する』とあります。
天皇は衆議院を解散できるが、内閣の承認が前提になると読めます。
しかし天皇が国政に関わることは憲法第四条で禁じられています。
ゆえに同条は儀礼的規定であり、天皇にも首相にも解散権はありません。日本と同じ議院内閣制を採る英国、ドイツの首相も固有の解散権を持っていません。
七条解散を最初に採ったのはワンマン吉田首相で、『抜き打ち解散』(一九五二年)として知られています。
『吉田のまやかし』と憤った苫米地議員が衆議員資格の確保を求めて裁判に訴えました。
最高裁は『高度に政治的な事件については国会の裁量に任せるべき。裁判所は判断を回避する』と逃げました。
難しい判断だからこそ最高裁は使命を果たすべきでした。以来、七条解散は首相の専権事項となりました。
内閣の国会軽視は吉田内閣以降、急速に進んでいきます。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

