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コラム

苦楽歳時記
vol122 樋口一葉

2014-11-13

 「狂気を少しも含まない天才は絶対にありえない」と語ったのはアリストテレスである。どうやら太古のギリシャ時代から、天才と狂気は紙一重であったようだ。

 樋口一葉のことを「明治が生んだただ一人の天才」と明言したのは小島政次郎である。『たけくらべ』を読了した森鴎外、幸田露伴、斎藤緑雨らは、異口同音にその才能を絶賛した。

 「此の人にまことの詩人といふ称をおくることを惜しまざるなり」。これは鴎外の称揚である。

 一葉は天才であったが、二十四歳で駆けぬけるように夭逝してしまったせいか、狂気の色相が明らかではない。

 父親の事業の失敗と兄の死によって一葉は母と妹を養うために、針仕事や雑貨店を営みながら細々と生計を立てていた。

 やがて作家としてデビューを果たした歌塾『萩の舎(や)』の先輩、田辺花圃に刺激されて、一葉はお金のために小説を書き始めた。  

 生活の糧を得るための苦悶のなかで、その鬱屈した思いを小説で表現することによって、一葉の才能が見事に開花するのである。

 一葉の後半生は、お金に縁のない人生であった。『よもぎふ日記』には、貧困との闘いが度々綴られている。

 「一葉」は雅号で、戸籍名は奈津。本名は夏子。

 二〇〇四年に財務省は、新紙幣をその年の十一月に発行する方針を固めた。一万円札の肖像は現在の福沢諭吉のままだが、新千円札には野口英世を、そして新五千円札は樋口一葉の肖像を採用することが決まった。

 今年は樋口一葉歿後、百十八年目を迎える。自分の肖像が、五千円札の図柄に採用されていることを知ったら、あの世の一葉は、さぞ苦笑することだろう。

 文壇に一瞬の光彩を放ち、人々の心を永遠に捉えた天才歌人(小説家)。二十四歳六ヶ月で肺結核により死去。十一月二十三日は、樋口一葉の正忌『一葉忌』。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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新井雅之

文芸誌、新聞、同人雑誌などに、詩、エッセイ、文芸評論、書評を寄稿。末期癌、ストロークの後遺症で闘病生活。総合芸術誌『ARTISTIC』元編集長。




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