苦楽歳時記
vol109 食い倒れ
2014-08-14
三倒れとは、京の着倒れ、大坂の食い倒れ、江戸の履き倒れ。
神戸はケミカルシューズの生産が有名であることから、昨今では神戸の履き倒れともいうらしい。
昔から川や運河が数多とある大坂では、八百八橋と呼ばれていた。江戸の八百八町、京は八百八寺と呼ばれている。
巷では、大阪の食い倒れというが、川の多い大阪では橋の杭を舟運が通過する度に、こすり傷つけて杭が倒れて橋が壊れてしまう。
橋の修復には多額の費用がかかり、船場(せんば)や道修町(どしょうまち)あたりの旦那衆が見栄を張って、杭を買うお金を競い合って出し合ったので、杭倒れといわれていた。「食い倒れ」とは、「杭倒れ」が語源であるのだ。
大阪は「食い倒れ」街。安価でウマイものが数多くある。浪速のソウルフードといえば、たこ焼きとホルモン。
僕は、大阪名物「どて焼き」が好きだ。牛すじ肉を串に刺して、白味噌でトロトロになるまで煮込んだ料理。酒の肴に最適だ。
大阪の千日前に、とら河豚(ふぐ)専門店『勇吉』がある。てっちり(ふぐちり)、てっさ(ふぐ刺し)湯引き、雑炊付きの、「天然とら河豚セット」。しかも飲み放題で四九八〇円。
天然のとら河豚が信じられないほど安い。これなら庶民の口にすんなりと入る。
鍋物といえば大阪名物「ハリハリ鍋」を忘れてはならない。鯨肉と水菜の鍋料理。その他にもコロ(鯨の皮)、さえずり(鯨の舌)、尾の身(尾肉)、あぶらすのこ(鯨の胸びれ)など、鯨には美味しい部位がたくさんある。
最後に「かすうどん」。南河内(大阪府南部)の郷土料理。「かす」とは揚げた牛ホルモンのこと。関西風のあっさりとした出し汁で、うどんと揚げたホルモンが絡み合う味は、まさしくクセになる味だ。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

