後藤英彦のぶっちゃけ放題!
第281回 負けて虚しい控えの選手
2014-07-01
サッカーW杯一次予選で日本代表は一つも勝たずに敗退し、日本人をがっかりさせています。
落胆したのは国民や出場選手ばかりではありません。登録二十三人中、出番機会を失った控え選手六人もガックリ肩を落としています。
控えとはいえ、日本ではメディアを賑わす有名選手、出番叶わず無力感にうち沈んでいます。
控えは補欠、ベンチウォーマーの別称で、六人は一九九八年以降最大の数字(過去に五人)です。
ゲームの九十分間、ベンチとアップエリアを行ったり来たり。何度も体をほぐしダッシュを繰り返して急な出番に備えていました。
努力の甲斐もなくゲーム終了のホイッスル。
ギリシャ戦後控えの一人、FWの斉藤が次の言葉を残しています。『自分が入ったらバイタルのどこかで崩せたら、というイメージだった。香川が途中から出て左だったので、出るなら右かな、と思っていた』。
監督の声でピッチを疾駆する夢想のさ中のゲームセット。ああ、やるせない残酷劇。
GKの楢崎正剛選手は九八年、○二年、○六年、一○年と四回連続で代表に選ばれた名選手だったが、○二年を除く三大会は一秒の出番もなく虚しく終えました。
元・日本代表監督イビチャ・オシムは『楢崎はベストチョイス』、本田圭佑は『楢崎さんよりすごいGKは見たことがない』と絶賛しているのに、です。
完璧の守備を誇り、練習の量は誰にも負けないのにそれだけではレギュラーになれません。
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プロ野球巨人の正捕手は阿部慎之助と決まっています。控えの捕手に小林誠司、実松一成、井野卓、加藤健、河野元喜、鬼屋敷正人の六人がひしめいています。
阿部が極端なスランプに陥り、病気や怪我で同僚が倒れない限り出番の来ない世界です。
創造的なアイデアと一度のチャンスを活かす強運の持ち主でなければ生き残れません。
オシムいわく『アイデアのない人もサッカーはできるが、サッカー選手にはなれない』。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

