後藤英彦のぶっちゃけ放題!
第260回 何が本物で何が偽物か!
2014-02-04
豪州牛を和牛、ブラックタイガーを車えび、一般野菜を有機野菜と・・。日本の高級ホテルの数々のメニュー偽装。
「うまけりゃいいんじゃない」。この手の開き直りほど身勝手はありません。偽装表記に乗せられたお客は黙って請求料金に応じています。騙されたとも知らないで。
画家エミリア・デ・ホーリー(一九○六~七六年)の名前をご存じか。
ハンガリーの贋作画家で、ピカソ、マティス、モジリアニ、ルノワールを得意としていました。
通称「贋作の天才」で、騙しの確信犯でした。
彼の贋作被害は欧米だけにとどまりません。日本の国立西洋美術館もしてやられた口です。
一九六四年、画商ルガロの誘いにのってドランの「ロンドン橋」、デュフィの「アンジェ湾」、モジリアニのデッサンを購入したけれど、いずれもホーリーの贋作でした。
たまたま訪日中のフランス文化相、アンドレ・マルローがこれらの絵を観て「なぜこんな優れた作品が日本に流れたのか」とコメント。
マルローは名にしおう目利き。そのマルローをも騙した出来栄えに同館はコロリ、当時のお金三千万円を投じて買い上げたそうです。
盗まれた作品が発見されたり、贋作扱いが本物と見直されたりすることも珍しくありません。
米バージニア州のある女性のケース。ノミ市で七㌦で求めた箱いっぱいのガラクタに、思いがけないお宝が混じっていました。
印象派の巨匠、ルノワールの「セーヌ河畔の風景」(一四X二三㌢)と題された油絵で、一九二六年、米収集家の手に渡っていました。
しかしボルチモア美術館に貸し出された五一年の盗難事件で、行方不明になっていました。
次はオランダ。ゴッホ美術館がこれまで贋作と軽視していた「モンマジュールの夕暮れ」(七二X九三㌢)を「本物」と公表。
傑作「ひまわり」と同じ一八八八年の制作だそうです。
神の判断ができない私たち人間は絶えず、モノの真偽を巡って右往左往しています。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

