苦楽歳時記
vol81 関東と関西
2014-01-31
関東では「おにぎり(御握り)」。関西では「おむすび(御結び)」と呼ばれている。関東ではおにぎりの形が三角、関西はおむすびの形が俵形。のりを巻く場合、関東が焼きのり。関西は味付けのりだ。
茶懐石で有名な京都の料亭『辻留』の二代目、辻嘉一氏は「おむすび」についてこう述べている。「手に水をうち、少量の塩を加減して、熱々のご飯を我慢しながら母親が子供に食べさせるために手でむすぶ。母親の愛情が掌からご飯に伝わり、本当に美味しい食べ物になる。」
「おむすび」とは、心を結ぶ意味もあるのだ。
「いなり鮨」になると形が逆転する。関東では俵形。関西は三角。中身も関東は酢飯だけ。関西では五目飯、または、ごぼう、ひじき等の具を入れる。
僕が子供のころに食べた「いなり鮨」には、おの実(麻の実)が入っていた。
当地では、「いなり鮨」の形はほとんどが俵形だが、僕の知る限りにおいては、ガーデナの『栄寿し』の「いなり鮨」が三角だ。
関東では「肉まん」、関西は「豚まん」。具は豚肉なのに「肉まん」はおかしい。日本のコンビニでは、「肉まん」に統一されていると聞く。統一するのであれば「中華まん」にすべきだ。
関東では「肉じゃが」に豚肉を入れることもあるという。これを「じゃがブー」と呼ぶらしい。関西では豚肉を入れる「肉じゃが」は考えられない。
三十五年ほど前、東京の喫茶店に入って、レイコーとイタリアンを頼んだら怪訝な顔をされた。関東では「アイスコーヒー」と「ナポリタン」。対して関西では、「コールコーヒー」(レイコー)と「イタリアン」。
正月の残りの餅を焼いているとき、つと頭によぎった。関東では「切り餅」(四角)、関西は「丸餅」だ。
伝統文化を重んじる関西では、四角い切り餅は御法度だそうである。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

