後藤英彦のぶっちゃけ放題!
第253回 笠間茂、迎田勝馬、杉葉子の点景
2013-12-10
LELA主催の清原精一・笠間茂回顧展(リトル東京ガレリア、十二月一日~同十五日)に出かけ、裸婦のバラエテイーを追及した清原、煉瓦の古ビル、山の稜線を愛した笠間の両作品を堪能しました。
とりわけ七○年代後半、LA特派員当時の懐かしい知己、笠間さんの諸作品を観ていると、当時の点景が走馬灯のように蘇ってきました。
笠間さんは羅府新報の記者をしながら日曜画家を楽しんでいましたが、これほどの作品を残していたとは思ってもいませんでした。
寡黙な駒井明さんが社長で、柔和な佐藤、野口さんらが狭い編集室でペンを走らせていました。
当時の日系社会のドンは迎田勝馬さんで、迎田法律事務所を訪ねては日系史や収容所体験を聞いていました。
たまたま事務所で油を売っていると、金脈問題で田中角栄首相がこけてダークホースの三木武夫さんが新首相に指名されたとの速報が飛び込んできました。
隣にいた迎田さんは「三木さんは友人でね。USCに通いながら羅府新報の記者をしてたんです。一九三二年にロスに来て四年後に帰国、政治家を志した苦労人で・・」といいました。
「それなら」と私。
「三木さんに首相就任おめでとうと電話をしてくださいよ」と頼むと迎田さんは興奮した面持ちで、オペレーターを通じ自民党本部に電話をかけました。
先方の話では、既に官邸内とのこと。
官邸にダイヤルすると、電話口で秘書が「三木派の諸先生、記者らに囲まれとても取り次げません」と困惑げ。
すると突然「迎田さん?わざわざロスから有難う」と三木さんの野太い声。「良かったなあ」。迎田さんの声は上ずっていました。
『ロスの旧友、祝福の電話』と見出しをつけて即刻送稿したのはいうまでもありません。
当時の思い出のもう一人に米国人と結婚、支局を時々訪ねてくれた杉葉子さんがいます。映画「青い山脈」で有名なあの女優さんです。
パロスバーデス在住の彼女とは折に触れて今も旧交を温めています。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

