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コラム

苦楽歳時記
Vol.69 ビューティフル

2013-11-01

日本人は勤勉で努力家であった。過去形になっているのは、現代の若者が怠慢であるというわけではない。戦後の復興期と比べると、骨身を惜しまずに働く者が少なくなったということである。

男は家庭を顧みずに仕事に打ち込んだ。ひと頃、モーレツ社員という言葉が流行ったが、一九七〇年代に入ってから、竹村健一さんがモーレツからビューティフルへと提唱し始めた。

世界で一番忙しい人物はアメリカの大統領であるそうだが、高度経済成長期の日本人は、忙しくしていることが、エリートの条件の一つであったように思えた。

「さぞお忙しいのでしょうね」と、人から問われると悪い気はしない。きょうは「お忙しい中」、「ご多忙の折」、挨拶の初めに使う言葉に、「忙しい」が頻繁に用いられる。

また、人を紹介する際やプロフィールなどに「多忙を極める」、あるいは「超多忙」と書かれているのを目にすることがあった。忙しいことは、そんなにかっこいいことなのだろうか。

心が亡くなると書いて「忙」しいと読む。豊かさを求めて粉骨砕身することは尊いことである。だが、忙しさに心を奪われて、遂に心を亡くしてしまったのが戦後の日本である。その現状を今更ここに書き連ねる必要はないだろう。

モーレツからビューティフルへと提言されてから、約四十年にも及ぶ歳月が流れたが、世間に浸透する風潮はより悪魔的だ。将来の夢を描けないでいる若人の胸中は、すさむ一方で荒れ放題。調和のとれた精神を育むための教育改革は急務だが、とりわけ家庭内での子供のしつけは肝要である。

将来を担う子供たちが、祖父母や両親の薫陶を受けて素直に育つこと。ビューティフルとは、思い遣りのある家族の調和であると、僕は思っている。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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新井雅之

文芸誌、新聞、同人雑誌などに、詩、エッセイ、文芸評論、書評を寄稿。末期癌、ストロークの後遺症で闘病生活。総合芸術誌『ARTISTIC』元編集長。




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