後藤英彦のぶっちゃけ放題!
第243回 ネットが握る出版界の行方
2013-10-01
活字情報を読んで、人は知識を重ね少年から成人へと成長します。
しかし無料ネットの登場で、有料活字が知識の泉を追われ〝出版不況″を招いています。
ナイル河畔の水草で作ったパピルス紙(茎の繊維を利用した紙の先祖)は、製紙法の発達する七、八世紀までヨーロッパで広く使われました。
用紙の進歩につれて発生した活字業は、順風満帆の時代を終えて今や無料ネットの前に後退を余儀なくされています。
毎月十二年以上、私がコラムを書いている月刊エルネオス誌(東京・新橋)とて、例外ではありません。
ネットと共存を願う発行人の祈りをよそに、雑誌の行方に暗雲が立ち込めています。
有料硬派の月刊誌ゆえ、料金、伝達スピード両面で、ネットの後塵を拝しています。
二〇〇八、九年にかけて月刊誌の有名どころが次々、休刊に追い込まれました。
同じ時期に休刊したのは主婦の友、論座(朝日新聞)、プレイボーイ日本版、月刊現代など実績ある月刊誌です。
悲劇は月刊誌だけに限りません。休刊に至らなくても返品累々、購読急減に泣いた週刊誌の何と多いことか。
無料ネットの参入とバブル経済に耐えられなかったのです。
ネット被害は米国も同じで、ワシントンポスト傘下のニューズウイークは音響機器メーカーにわずか一㌦で売却される始末です。
九五、六年にピークを迎えた日本の出版界の業績はたちまち急降下を始めます。
漫画ブームを先導した週刊少年ジャンプが好例で、九五年の新年号で六百五十三万を記録した部数が、九六年に半分以下に急減します。
五九年新年号で百万部を突破した週刊新潮も購読減に歯止めが効かず、今年六月現在で四割減、五十八万六百五十六部と低迷を続けています。
百十八万五千部だった月刊誌の帝王、文藝春秋でさえ六月現在、二分の一以下の五十二万二千六百六十七部まで落ち込んでいます。
活字界が生き残るには読者に歓迎される有料ネットをどう取り入れるかにかかっています。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

