編集部
パネール美紀 「Swingin’ to the Sea」リリースコンサート 大切なことを思い出すメッセージを音で発信
2013-09-18
サンディゴ在住のジャズ・シンガー、パネール美紀がさんが、9月22日にロサンゼルスでライブを開く。5月にリリースしたデビューアルバム「Swingin' to the Sea」は、アメリカの主要ジャズ・チャートのJazz Weekで53位にランキングされるなど、ジャズ界で話題となっている実力派だ。また美紀さんは、医師としても活躍中という異色なアーティストとしても注目されている。ライブに先駆け、美紀さんにインタビューした。
私は一週間のうち5、6日間は患者さんをケアするために過ごし、医療のプロとして責任を持って最良の治療ができるように毎日勉強しています。そして残りの1、2日は自分のケアをし、リセットします。オフの日には、よく海に出かけます。塩気がある甘いかおりの風に包まれながら静かな波の音を感じていると、素敵な音楽が私の中に舞い降りてきます。
海をテーマにした「Swingin' to the Sea」の中で、私が作詞作曲をしたものは、「Sexy, Sexy」と「Sunny San Diego Sunday」です。
「Sunny San Diego Sunday」の歌詞で、「Sun, kiss me as I smile, color me as you rise, show me life can be such fun and so worthwhile(太陽よ、わたしの笑顔にキスして。昇りながら太陽の色に私を染めて。そして生きているっていうことが楽しくかけがえのないものだっていうことを私に見せて)」という部分があます。
日曜日に早起きして昇っていく朝日を浴びながら、素敵な一日の始まりに心で感じたままが歌詞になり、メロディーもアップリフティングなものが自然に浮かんできたので一気に書き上げました。
「Free from woe, I’m heading home(心配することなんて何もない。わたしの心は故郷に向かう)」の部分は、太平洋の向こうに自分のルーツである日本があることを、不安な気持ちになりそうになっても海の向こうで日本で頑張っている仲間たちがいるんだ、だから自分も頑張ろうっていう思いで、こんな言葉が出てきました。
「Swingin' to the Sea」では、世界のトップアーティストと共演しています。バーバラ・ストレーサンドやナタリー・コールのピアニストのタミール・ヘンデルマン、グラミー賞にノミネートされたフルートのロリ・ベル、チェット・ベイカーなど伝説の巨匠たちとの共演歴もある国宝クラスの盲目のピアニスト、デーブ・マカイ、そして長年サラ・ヴォーンのベーシストをしていたボブ・マグヌソンです。彼らはたとえ新人の私のアルバムでも手加減ゼロです。世界のトップレベルとしての仕事を惜しみなく魅せてくれました。“自分が納得しない音は、スタジオの外に出さない”そんなポリシーで取り組んでくれました。
アルバムを作るにあたって、私の声で、私の歌で世の中に残っていくような隠れた名曲を探していました。ロリが夜中の2時に、「美紀にこの歌はピッタリだわ」と、「Like Me」を思い出して、20年前に録音した時の楽譜を探してくれました。楽譜をみた瞬間、この曲に一目惚れ。10代から病気でだんだん視力を失ったデーブが、60年代当時の恋人ビッキー・ハミルトンと書いた曲です。作詞をしたビッキーは、この曲が録音された2年後に、まだ20代の若さで白血病で亡くなりました。
仕事で患者さんやご家族に寄り添い、つらい闘病生活やエンドオブライフのケアをサポートしている私の心の中に、その若い二人の様子がものすごくリアルに押し寄せてきました。私は「この歌が、私を選んでくれたんだ」と確信して、自分自身をこの曲に捧げました。テクニックなどは一切気にせず、ただ歌が導いてくれる心の中のフィーリングを描きました。ピアノは作者のデーブです。
数年前、私よりも若かった友人が病気で亡くなりました。つらい闘病をしながらも、自分らしく毎日を大切に過ごしていた彼女は、最後の眠りにつく前にサンディエゴの太陽のような明るい笑顔で「ありがとう、楽しかったよ」と言って旅立ちました。
そんな彼女や診療所で闘病中の患者さん達から教わることは、「人生の時間は忙しい日常にまぎれてしまうと、あっというまに過ぎてしまう」ということ。親しい友人や家族と過ごすハートフルな時間や美しい自然と触れ合い人生の恵みを実感する時間、そんなクォリティーの高い時間を味わい感謝する大切さを忘れてしまいがちです。
私のアルバムを通して、できるだけ多くの方達が「クォリティータイムをもっと過ごそう、味わおう」と思うきっかけになってくだされば、こんなに光栄なことは他にありません。
ジャズは歴史の中で世界大恐慌や人種差別など、人々が苦労多き時代に耐えて明るく生きるための支えになってきました。私はその流れを尊重して、ハイペースなスピードで過ぎていく社会の寂しさや味のなさに光を当てて、普段忘れてしまいがちな大切なことを思い出すヒントになるようなメッセージを、音で発信し続けたいです。
世界的なピアニスト、タミール・ヘンデルマンとグラミー賞候補者ロリ・ベルと共演
パネール美紀 「Swingin’ to the Sea」リリースコンサート
日時:9月22日(日)7:30pm
場所: Vitello’s restaurant
4349 Tujunga Avenue, Studio City, CA 91604
818-769-0905
料金:ミュージックチャージ15ドル
プラス食事15ドル以上
詳細:www.mikipurnell.com
=Tomomi Kanemaru
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

