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コラム

苦楽歳時記
Vol.45 茶のにおい

2013-05-28

 新茶の時節到来である。香気の高いはしり茶を、舌の上で転がすようにして味わうと、萌え出た新芽の風味が咽頭にしみかえる。
  
「駿河路や はなたちばなも 茶のにをひ」。

静岡にある『世界緑茶協会』事務局が監修しているエッセイを読んだ。そこに、芭蕉の句に出てくる「茶のにおい」について言及されてあった。
 
おおよその国文学者は、茶のにおいを新茶の香りであると解釈しているが、芭蕉がこの句を詠んだのは五月中旬。太陽暦に換算すると六月の初めになる。新茶の季節は既に終わっている。従って、はなたちばなの香りを圧倒する茶のにおいとは、街道筋周辺の民家が自家用の番茶を作るために、生葉を釜で炒ったにおいであるというのである。
 
芭蕉は、江戸から東海道を京へ向かっていた途中で、大井川の川止めにあって島田で四泊している。芭蕉は余儀なく足止めされた期間に、農家や投宿先の軒下で、お茶の葉を炒る強い香りを嗅覚していたのであろう。
 
それから、「はなたちばな」の季語は夏であるから、芭蕉がこの句を詠んだのは、六月の初めとする見解に異論はない。
 
但し、静岡のお茶の収穫期は四月下旬から九月までである。その期間に四回にわたってお茶の葉が収穫される。即ち、芭蕉は二番茶の収穫期にあたる六月に、駿河路へ差しかかったのである。また、新茶が出回るこの時節において、日頃、まめに生葉を炒る農家の人たちも、この季節ばかりはその手を休めて、はしり茶を賞味していたのではないだろうか。
   
このようなことから「茶のにおい」とは、一番茶でも、お茶の葉を炒ったにおいでもないのである。芭蕉は二番茶の香りを詠んでいたのだ。と解釈しているのであるが、これはあくまでも私見に過ぎない。
   
日本から新茶の入った小包が届いた。それでは一句添えて、礼状をしたためることにする。

『風光り小包きたる茶のにおい』。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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新井雅之

文芸誌、新聞、同人雑誌などに、詩、エッセイ、文芸評論、書評を寄稿。末期癌、ストロークの後遺症で闘病生活。総合芸術誌『ARTISTIC』元編集長。




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