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コラム

苦楽歳時記
Vol.43 夢でよかった

2013-05-28

 昔、世話になった編集者の桜子さんは、西海岸へ新婚旅行にやってきた。二十七年ぶりの再会に、互いに熱い涙を流して抱擁すると、僕の不自由な体躯(からだ)をじっと見つめてから、僕の両手を強く握り締めてくれた。

 桜子さんは還暦を迎えてから、四度目の結婚を果たした。新郎は七歳年下の音楽家である。最初の夫は酒乱。二番目は一回り年下の夫で浮気が原因。三番目はギャンブル狂。

 桜子さんは才媛にして、年齢よりもかなり若く見える美貌の持ち主。四度目の夫、正和さんは優しくて真面目な方だとお見受けした。 

 僕は家人と共に、先ずロサンゼルス発祥地、オルベラス・トリートに案内をした。正和さんが一人で車の中で待っているとき、通りすがりの男に「車体の後ろに、赤いペンキが塗られているから見ろ」と言われた。正和さんは車から降りて見に行った隙に、助手席に置かれていたセカンドバッグを、もう一人の賊に持ち去られた。

 南米のどこかの国では、スリの学校があると聞く。毎年、春から初夏にかけて、卒業試験と称して北米まで腕試しにやってくる。

 かくいう僕も、ファーマーズ・マーケットの駐車場で、同じ手口の一味に遭遇して、現金、クレジットカード、免許証の入った鞄を盗まれたことがある。

 新婚旅行一日目にしてこの災難。幸いにもセカンドバッグの中には、貴重品が入っていなかったらしい。

 数日後、桜子さん夫妻はレンタカーを借りて、ラスベガスへと向かった。ホテルのショーとグランドキャニオンが楽しみだと語っていた。

 翌日、桜子さんから電話がかかってきた。グランドキャニオンから電話をかけているという。
正和さんが崖から足を滑らせて、行方不明だという。泣きじゃくる桜子さん。

 僕はそこで、眠りから目を覚ました。「夢でよかった!」。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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新井雅之

文芸誌、新聞、同人雑誌などに、詩、エッセイ、文芸評論、書評を寄稿。末期癌、ストロークの後遺症で闘病生活。総合芸術誌『ARTISTIC』元編集長。




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