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コラム

苦楽歳時記
vol. 16『読書週間』に思う

2012-10-25

 「古木は燃すべく、古酒は飲むべく、旧友は信ずべく、古書は読むべきである」。経験論哲学の創始者フランシス・ベーコンの言葉が好きだ。
   
日本では、十月二七日から十一月九日まで読書週間。ショウペンハウェルは『読書について』の中で、文学を「とどまる文学」と「流れる文学」の二つに区別している。前者は真の文学で永遠に持続する文学を旨とし、後者は偽りの文学、即ち毎年数千の作品を市場に送り出して、話題性を仕掛けて営利に疾走するが、二、三年経てば、持てはやされていた名声が消滅してしまう駄書のことである。
   
数年前、朗読グループ、『耳文庫』代表の肝付佳寿子さんから、マーク・トウェインの『ハックルベリ・フィンの冒険』(角川書店)を恵贈して頂いた。訳者は肝付さんの叔父上であられる英文学者の大久保博さん。

一九九〇年にトウェインの幻の自筆原稿が新たに発見されてから、初版では割愛されていた「筏のエピソード」が含まれている完訳版。
   
僕が少年の頃に読んだ『トム・ソーヤの冒険』や『ハックルベリ・フィンの冒険』は佐々木邦が訳していたが、『ハックルベリ・フィンの冒険』の冒頭に書かれていた短文を読んで、度肝を抜かれた事を思い出す。

「この物語に主題を見つけようとする者は、告訴されるであろう。教訓を見つけようとする者は、追放されるであろう。プロットを見つけようとする者は、射殺されるであろう」
(大久保博訳)

トウェインの古典に対する思い入れは格別である。「古典とは、誰もが既に読んでしまっていることを望みながら、しかも、誰もが読もうとは望まないものである」
   
読書週間は、ベストセラーのプロモ―ション週間ではない。「新しい本が出版されたら、古い本を読め」。読書家の先人たちが遺した警句に立ち帰りたい。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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新井雅之

文芸誌、新聞、同人雑誌などに、詩、エッセイ、文芸評論、書評を寄稿。末期癌、ストロークの後遺症で闘病生活。総合芸術誌『ARTISTIC』元編集長。




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